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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

アルツハイマー病治療の新薬 過剰な期待を戒め 「治療可能な病気」への理解も

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米国で条件付き承認「アデュカヌマブ」

アルツハイマー病治療の新薬 過剰な期待を戒め 「治療可能な病気」への理解も

記者会見する岩坪威氏、粟田主一氏(右から)

 アルツハイマー病治療の新薬「アデュカヌマブ」は、これからの認知症治療にどんな変化をもたらすのか。日本記者クラブ(東京都千代田区)で7月9日、東京大学教授の岩坪威氏、東京都健康長寿医療センター研究所副所長の粟田主一氏、認知症の人と家族の会代表理事の鈴木森夫氏(オンラインで参加)が、「アデュカヌマブとこれからの認知症治療」のテーマで記者会見した。

 アデュカヌマブは、日本の製薬企業エーザイと米製薬企業バイオジェンが共同開発した。臨床試験の途中経過が思わしくなく一度は開発中止が発表されたものの、データの再解析によって開発計画がよみがえるという異例の経過をたどったあげく、今年6月、米国で「追試」の条件付きで承認された。日本でも承認申請中だ。月1回の点滴治療で、費用が高額であることでも話題になっている。

脳に蓄積したアミロイドを除去

 岩坪氏によると、アルツハイマー病の治療薬はこれまで、アリセプトなどの「症候改善薬」と呼ばれる薬が4種類登場しているが、症状がいったん上向いた後に悪化していくスピードは偽薬とほぼ同じ程度であるという。そこで、アルツハイマー病のメカニズムそのものに作用する「疾患修飾薬」と呼ばれる薬の開発が求められてきたが、これまで百数十もの治験が不成功に終わってきた。

 アデュカヌマブは、抗アミロイドβ(ベータ)抗体療法と呼ばれる治療のひとつで、アルツハイマー病の原因となる脳内に蓄積したアミロイドに抗体が結合して、除去する仕組みだ。

 アデュカヌマブの開発が成功した要因として岩坪氏は、早期の軽度認知障害(MCI)も含む被験者を対象としたこと、アミロイドPET検査の実用化によって疑わしい症状があっても25%程度いるアルツハイマー病ではない人を試験から除外できたこと、高用量で起きやすい局所脳浮腫などの副作用の発生を見極め、有効性を発揮するのに必要な高用量の適用が可能になったことなどを挙げて説明した。

 同様の抗体療法では、蓄積したアミロイドのみを認識して除去する「ドナネマブ」(イーライリリー社)が臨床試験で高い効果を示すなど、アデュカヌマブに続く新薬の登場にも期待がかかるという。次の目標としては、MCIよりもさらに早期の症状のない「プレクリニカル」の人を対象にした予防・治療薬の開発が考えられるとしている。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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