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関節リウマチ 飲み薬「JAK阻害薬」も選択肢に…高い治療効果を期待 副作用には注意

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 免疫の異常で関節が痛む「関節リウマチ」の治療指針が今春、7年ぶりに改訂されました。高い治療効果が期待されるものの、副作用に注意が必要な飲み薬を選択肢の一つとして位置づけています。妊婦や高齢者など配慮が必要な患者に薦められる治療についても、新たに示しました。(加納昭彦)

「JAK阻害薬」

「関節リウマチ」治療指針改訂…副作用注意の薬 選択肢に

 関節リウマチは、病原体などから自らを守る免疫が過剰に働き関節を攻撃することで起こる病気です。関節に炎症が起き、手足の指や腕、肩、膝など全身の関節に腫れや痛みが出ます。発熱や 倦怠けんたい 感なども生じます。国内の患者は80万人以上と推計され、女性が4分の3を占めます。

 治療はまず、関節の炎症を抑える効果がある抗リウマチ薬「メトトレキサート」(MTX)を服用します。半年以内に十分な効果が得られない場合には、炎症を引き起こす特定の物質の働きを抑える「生物学的製剤」を併用するのが標準的です。

 リウマチ専門医らがつくる日本リウマチ学会が4月に公表した最新の指針では、生物学的製剤と並び、関節の炎症に関わる特定の酵素の働きを抑える「JAK阻害薬」という飲み薬も選択肢として位置づけました。

 生物学的製剤は点滴か注射のいずれかの方法で使用されますが、JAK阻害薬は飲み薬です。2013年から使えるようになり、現在では公的医療保険が認められているものは5種類になりました。治療効果は生物学的製剤と変わらないとされています。ただし、帯状 疱疹ほうしん や、肺炎、 腎盂じんう 腎炎などの重い感染症のリスクがあります。

 長期的な安全性はまだ分かっておらず、注意が必要です。こうした点から、指針では「生物学的製剤を優先する」としました。

 東京都の葛西幸子さん(69)は、17年からJAK阻害薬を服用しています。葛西さんは「10年以上前から生物学的製剤を使っていましたが、徐々に効かなくなり手足の痛みに悩んでいました。薬を切り替えてよかった」と話しています。

高齢者や妊婦は…

「関節リウマチ」治療指針改訂…副作用注意の薬 選択肢に

 新たな指針では、配慮が必要な患者に推奨する治療法も初めて示しました。

 関節リウマチは、40~60歳代で発症するケースが多く、近年は高齢化がさらに進んでいます。高齢者にも生物学的製剤やJAK阻害薬を使うことができるものの、若い人よりも免疫が低下しやすく重い感染症につながるリスクが高いとして、注意を呼びかけました。

 また、妊娠や出産と重なりがちな20~30歳代で発症する人も少なくありません。

 妊婦については、おなかの赤ちゃんに悪影響を与える恐れがあるMTXは使わず、その恐れがない生物学的製剤や一部の抗リウマチ薬の使用を薦めています。MTXを中止した後に、1回の月経周期を過ぎれば妊娠しても差し支えないと明記しました。

 今回の指針をまとめた日本リウマチ学会理事(東京女子医大教授)の 針谷正祥はりがいまさよし さんは「リウマチには新薬が次々に登場し、治療は進歩していますが、専門医の数は限られ地域格差があります。指針が浸透すれば、全国の患者が、より適切な治療を受けやすくなります」と話しています。

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