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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

指で「OKサイン」ができない…女性に多い痛みとしびれ「手根管症候群」 楽器や編み物が趣味の人も注意して

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 親指、人さし指にしびれや痛みが生じ、やがてボタンをとめるのも難しく……そんな症状に悩む患者さんがいる。「 手根管(しゅこんかん) 症候群」と言われる神経障害で、手首にあるトンネル内での“落盤事故”が起きた状態と考えていただくとよい。骨と 靭帯(じんたい) に囲まれた手根管と呼ばれるトンネルの内部は、列車ではなく、 正中神経(せいちゅうしんけい) やさまざまな (けん) (指を曲げる働きを担っている)が通過している。この手根管が炎症などによって狭くなり、その内部の圧力が高まることで、正中神経が圧迫され、手根管症候群を発症するのだ。神経を列車に例えれば、「列車がトンネル内を通過する際に、落盤事故にまき込まれて正常な運行ができなくなった状態」と考えていただくとよいだろう。

はしを持つのも難しく…

指で「OKサイン」ができない…女性に多い痛みとしびれ「手根管症候群」 楽器や編み物が趣味の人も注意して

 女性に多く(男性の6倍)、妊娠、出産などをきっかけとして発症することが多い。チェーンソーなどの振動器具を用いる方、手首の曲げ伸ばしが多い職業の方、楽器の演奏や編み物をする方などで多くみられる。

 しびれや痛みは親指、人さし指に始まり、いずれ中指、薬指の親指側に広がる(手の甲には起こらない)。また、親指を動かすことが制限され、進行すると母指球筋(親指の付け根の筋肉の膨らみ)がやせてくる。そうなると、いわゆる「OKサイン」ができなくなり、“猿手”(猿はこの母指球筋が発達していない)と呼ばれる状態を呈するようになるのだ。重症化するとボタンをかけたり、はしを持ったりといった日常生活の動作が困難となる。症状は寒い明け方に強く、手を振ることで軽快するのが特徴である。

両手の甲を合わせると1分後にしびれが

 簡単な診断法がある。手首の関節を軽くたたくとしびれが広がること(ティネル徴候)、同じ部分を押さえるとしびれが強くなること、指を下に向けて両手の甲を合わせていると約1分後にしびれが強くなること(ファーレン徴候)を確認すればよい。手首の骨の状態をみるレントゲン検査や神経伝導速度の測定も併せて行う。最近では、超音波検査を用いて、手根管を占拠している病変や 滑膜(かつまく) 炎(関節や腱を覆っている薄い膜の炎症)の有無を調べ、正中神経自体のはれの程度を測ることが積極的に行われている。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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