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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

私ががんであることを子供に伝えた方がよいのでしょうか?

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「家族の一員として、あなたを信頼して伝えている」

 伝え方には、ある程度のコツもあるようです。

  • 話をするときには、静かに落ち着いて語り合える場所やタイミングを選ぶ
  • 「がん」という言葉もきちんと使って、ぼやかさずに伝える
  • がんは、風邪などと違って、うつることはないことを伝える
  • がんになったのは、誰のせいでもないことを伝える

 詳しくは、 NPO法人「ホープツリー」のホームページ などで見ることができますので、ぜひご覧ください。

 また、医療機関によっては、看護師、心理療法士、ソーシャルワーカーなどが相談に乗ってくれますので、おかかりの医療機関で、相談窓口があるか尋ねてみてもよいでしょう。

 「子供に伝えると、子供が学校などでべらべらしゃべってしまうのではないか心配」という声もよく聞きます。自分ががんであることは周囲に隠しているので、子供を通じて知られてしまわないように、子供にも隠しておきたい、というのです。がんであることを隠さなければいけない社会の雰囲気については、いろいろと思うところもありますが、今の日本では、「隠しておく方がよい」と考える方が大半のようです。そういう心配も抱えながら、子供に事実を伝えるのには勇気がいるかもしれませんが、それでも、子供には伝えておく方がよいと、私は思います。

 外でしゃべってほしくないのであれば、「家族の一員として、あなたを信頼して伝えているが、これはとても大切なことなので、家族以外にはしゃべらないでほしい」と、率直に伝えるのがよいでしょう。

育まれる責任感と共感する力

 本当は、がんがあっても自分らしく過ごせるように、がん患者もそうでない人も、分け隔てなく自然に受け止められるような社会になってほしいのですが、どうしても、がんという病気は、病気そのものよりもイメージの方が過大になっていて、タブー視されたり、好奇の目で見られたりする風潮があります。このイメージが 払拭(ふっしょく) されれば、がん患者さんもだいぶ生きやすくなるはずですが、その実現までにはまだ長い道のりがありそうです。そんな社会であるからこそ、少なくとも家庭においては、隠し事なく、家族みんなで思いを共有することが大事なのだと思います。

 家族の一員として、大切な事実を知らされた子供は、ショックを受けたり、つらい思いをしたりすることはあるでしょうが、その思いも、家族で共有されているものであり、取り残されたような孤独を感じることはないはずです。家族の一員としての責任感も生まれ、共感する力も育まれます。もちろん、そんなにうまくいくことばかりではなく、家族関係の悩みは尽きないと思いますが、それこそが、かけがえのない家族の姿なのかと思います。

 患者さんも、ご家族も、病気を一人で抱え込むことなく、家族で思いを共有し、支え合いながら、また、願わくは、社会の中でもみんなで支え合いながら、すべての人が自分らしく生きていってほしいと思っています。(高野利実 がん研有明病院乳腺内科部長)

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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