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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

私ががんであることを子供に伝えた方がよいのでしょうか?

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 がんと診断されて、治療を受けている患者さんの中には、家族にその事実を伝えていない方がおられます。家族に心配をかけたくないと思ったり、話すきっかけがつかめなかったりして、一人で抱え込んでいるようなこともあるようです。夫婦では共有していても、子供には伝えていない、というケースもよくあります。子供には受け止めきれないのではないか、話してもわかってもらえないのではないか、学校の友達にしゃべってしまうのではないか、など、いろんな不安があるようです。

がんであることを子供に伝えた方がよいのでしょうか?

イラスト:さかいゆは

真実を隠すことでもっと不安に

 でも、真実を隠しておくというのは、けっして得策とは言えません。親が不安を抱えていること、いつもと違うところに出かけていること、自分のいないところで両親が大事そうな話をしていること、そんな状況を、子供は、親が思っている以上に感じ取っています。そして、自分に何かを隠しているのではないか、自分には本当のことを話してくれていないのではないか、という思いを抱くようになります。はっきりと伝えてもらえないことで、悪い方向に想像を膨らませてしまうこともあります。「心配をかけたくない」という願いとは裏腹に、もっと不安な思いをさせてしまっている可能性もあるということです。

 真実を隠すためには、うそをつかなければいけないこともありますが、それは、患者さん自身にとっても大きなストレスとなります。うそをつくことの後ろめたさであったり、うそがばれることへの不安であったり。そして、真実を隠すことによって、子供との間に壁をつくってしまう、という大きな問題もあります。

まずは信頼して向き合ってみる

 やはり子供には、できるだけ、ありのままの事実や気持ちを伝えるのが望ましいと、私は思います。ただ、「それがわかっていても、実際に伝えるのは難しい」という声も聞こえてきます。子供の年齢によっても、性格によっても、親子関係によっても、受け止め方はいろいろですので、「絶対にこうでなければいけない」というやり方があるわけでもありません。

 「とにかく伝えなければいけない」と考えるよりも、まずは、子供を信頼して向き合ってみることが大事なのだと思います。「できるだけ隠し事はしない」「できるだけうそはつかない」という原則を守りつつ、「家族の一員であるあなたと思いを共有したい」というメッセージを伝えることから始めて、子供の反応を見ながら、あわてずに、じっくりと、語り合うのがよいでしょう。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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