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大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」

医療・健康・介護のコラム

高血圧の会社員はオフィスで受診、患者はリラックス、自宅の生活ぶりもわかる……オンライン診療はメリットも多い

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猫アレルギーがある女児の自宅で猫2匹が走り回っていた

 そして、オンライン診療ならではの利点も見えてきました。一つは、患者さんが皆リラックスしているということです。診察室に入るだけで泣いてしまうお子さんもいますが、自宅では機嫌が良いだけでなく、普段よりも活発であったり、私に自ら話しかけてきたりする子もいて、むしろコミュニケーションが増えるということも少なからずありました。

 もう一つは、オンライン診療だからこそ生活の場が見えるということです。ぜんそくで定期受診している10歳の女の子、いつもは月に1回受診していましたが、今回はオンラインでの受診となりました。リビングからお母さんと一緒に画面に現れましたが、飼い猫2匹も一緒でした。血液データを見ると、この子にはネコ上皮のアレルギーがあり、喘息の改善が見られない原因としては十分でした。飼い猫がいることは聞いていましたが、実際に家の中で走り回っている猫を見ることで、改めて生活の中でのリスクを感じることができました。お母さんには、猫と触れ合うのは一定時間として、ある程度は猫と過ごす部屋を分けるなどの工夫が必要であることを伝えました。

高血圧の会社員は仕事の合間にオフィスで受診

 少しずつではありますが、生活習慣病で定期受診されている成人の患者さんにもオンライン診療を広げています。50代男性で高血圧症の患者さんですが、平日は仕事が忙しく、土曜日にしか来院することができませんでした。土曜日はこのような患者さんが多く、待ち時間も長いため、ほぼ半日を受診に費やしていました。オンライン診療に切り替えたところ、平日の午後に会社のオフィスから接続されました。食事や運動などの生活改善については、対面診療と変わりなく聴取することができますし、毎日の家庭で測る血圧も、カメラに向かって血圧手帳をかざすことで確認することができました。もちろん、オンライン診療のみで行うことは、聴診などができないため危険ですが、対面診療と適宜組み合わせることによって、安全にそして効率的に診療を行うことができるのではないかと考えています。私にとって、彼の仕事環境を確認できたのも収穫でした。

安全で効率的

 オンライン診療は、かかりつけである患者さんに対しては、安全にそして効率的に診療ができる新たな診療形態として期待できることがわかりました。わざわざ受診するまででもないが、薬局で薬を買うのも不安というニーズにも応えられます。かかりつけ医としては、より患者さんと近くなるツールなのです。

 一方、かかりつけではない初めて会う患者さんがオンライン診療であった際は、医師として不安になるのも事実です。画面越しに見えるその様子や所見が「いつもと比べてどうなのか」がわからないからです。かすれた声が元々なのか、それとも今回のエピソードなのかも患者さんから聞く以外に情報がありません。対面診療であれば、診察で補えますが、オンライン診療ではそれが十分行えないのが欠点です。

オンライン診療でかかりつけ医を見つける

 オンライン診療は基本的にかかりつけの関係にある患者・医師間で行うべきだと考えています。しかし、かかりつけ医を見つけるきっかけとして、まずは便利なオンライン診療を使いたいというニーズがあるのも事実です。新たな診療形態として、安全と信頼が担保できるオンライン診療が少しずつ醸成していくのがよいと感じています。(大橋博樹 医師)

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大橋博樹(おおはし・ひろき)

多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。
1974年東京都中野区生まれ。獨協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。

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1件 のコメント

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旧診療と新規医療の狭間と未来の翼が大空に

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

オンライン診療はこれまでの診療に比べて問題だらけです。逆もしかりです。これから、すり合わせながらでしょう。一方で、特に医療過疎地域にやむなく経験...

オンライン診療はこれまでの診療に比べて問題だらけです。逆もしかりです。これから、すり合わせながらでしょう。一方で、特に医療過疎地域にやむなく経験不足な医師を送り込み、ファーストタッチが悪くてこじらせていたケースには良い部分も多いのではないかと思います。同じ話、同じ検査所見でも、熟練やマニアには違って見えます。僕は元放射線科医として、画像診断をベースに様々な学会の演題を見てきました。そういう中で、患者さんの聴診や触診ができない分を、背景の観察や問診の丁寧さで補うことが重要なのかもしれません。そして、後送や追加検査の医療内外のインフラや地域のメンツの問題もあります。本当の問題はここなのかもしれません。残念ながら、都会の田舎や田舎の田舎に都会と同じレベルの機械や人材量を求められません。それでも、遠隔診断や関連の仕組みで、日本全国統一の医療制度を生かすように社会が動いていけばいいとは思います。

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