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医療・健康・介護のコラム

「組織」のぶつかりあいでも起きる股関節の痛み

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 「東京2020」に出場するアスリートが決まってきました。もちろん新型コロナウイルス感染症に対する懸念が完全に払拭されたわけではありません。開催される以上は安全面での対策を十分に行い、無事に開催されることを期待します。出場する選手には、困難な状況の中ではありますが、ベストパフォーマンスを出し切ってほしいですね。今回は、股関節に痛みのあるサッカー選手の例です。

 Lさんは、高校でサッカーを行っています。キックの際に股関節に痛みを感じるようになっており、思ったようなパフォーマンスを出せなくなっています。なかなか痛みがとれなかったため、医療機関を受診し、検査の結果、股関節に「インピンジメント」があると言われました。

インピンジメントとは

 インピンジメントとは「衝突」の意味です。肩や股関節の動きにおいて組織と組織がぶつかることで、痛みなどの症状が出るときに使われる言葉です。股関節は肩関節と同じ球関節ですが、肩関節と比べると受け皿の覆う割合が大きいため脱臼が生じることはまれです。しかし、キック動作の多いサッカーや、大きな動きを要するバレエなどでは、繰り返し加わる負荷により、様々な組織に損傷が生じます。

股関節の痛みは、「組織」と「組織」のぶつかりあい

 股関節を曲げていく際に、もともとの骨の構造上、 大腿(だいたい) 骨と 寛骨(かんこつ) で衝突が生じる状態を大腿骨 寛骨臼(かんこつきゅう) インピンジメント(FAI:Femoroacetabular Impingement)と呼びます。これは2003年に体系的に示された新しい概念です。日本では15年に日本股関節学会が主導して診断指針が作成されました。スポーツ医学や股関節を専門としている人以外には、医療関係者でもまだなじみが薄い言葉です。FAIには寛骨臼が張り出している「ピンサー変形」と大腿骨 頭頚(とうけい) 部がふくらんでいる「カム変形」の二つのタイプがあります(両方が併発している場合もあります)。

股関節の痛みは、「組織」と「組織」のぶつかりあい

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。

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