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医療・健康・介護のコラム
「組織」のぶつかりあいでも起きる股関節の痛み
リハビリを基本とした治療を
FAIと診断された場合でも、基本的にはリハビリテーションを中心とした治療が行われます。痛みが強い場合には、なるべく安静にしているなど運動量の調整が必要ですが、その間も状態に応じて股関節周囲の筋肉である大殿筋、中殿筋、小殿筋、内転筋、腸腰筋などを強化していきます。また、競技動作の改善も必要です。サッカーの場合、体幹の筋力不足により、上体をかぶせるような姿勢でキックしていたり、軸足の不安定感があったりと、さまざまな原因で股関節に過剰な負担がかかっているケースもあります。理学療法士やアスレチックトレーナーにアドバイスをもらいながら、日ごろの動きを改善していく必要があります。
それでは、Lさんの経過です。
サッカーのキック動作はしばらく休むことにしました。理学療法士によるリハビリテーションを開始し、骨盤周囲や脊柱の可動性を獲得するエクササイズを行いました。また、体幹の安定性を改善するメニューを行いました。徐々に痛みも改善してきたため、段階的にキック動作を行い、サッカーの試合に出ることができました。

症状に改善が見られない場合、関節鏡を用いて小さな手術創から、インピンジメントを生じている部位を切除することがあります。関節唇が傷んでいる場合には、部分切除や縫合術が行われます。また、画像検査上診断できる損傷はなく、股関節周囲を含む鼠径部に痛みを生じている状態を「グロインペイン症候群」と呼びます。痛みの部位は恥骨付近、内転筋や下腹部などさまざまです。この場合も、基本的にはリハビリテーションを中心としたメニューが組まれます。しかし、痛みが出てから治すのではなく、痛みが生じる前の段階から、しっかりとしたエクササイズメニューをこなしておきたいですね。(大関信武 整形外科医)
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