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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

トイレのおむつ交換台から転落 4か月の赤ちゃんが頭がい骨骨折…事故多発の原因は本当に「不注意」なの?

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 前回は、のせることが想定されていない製品からの転落のお話をしましたが、今回はのせるための製品からの転落を取り上げます。

トイレのおむつ交換台から転落 4か月の赤ちゃんが頭がい骨骨折…事故多発の原因は本当に「不注意」なの?

イラスト:高橋まや

10年以上前から多発

 おむつ交換台は、乳幼児を上にのせて、おむつの交換ができるように設計された小さな台で、最上部はおむつ替えの作業中に乳幼児を寝かせておくようにできています。その下には引き出しがあって、おむつやおしり拭きなど、おむつ替えで必要となるものが収納できるようになっています。近年では公衆トイレにおむつ交換台が設置されていますが、これが普及したのは1990年代です。当初は女性トイレに設置されていましたが、「平等な子育て活動」の働きかけによって男性トイレにも設置されるようになりました。アメリカでは、公共施設のトイレにおむつ交換台の設置が義務づけられており、日本でも、条例によって乳幼児のおむつ交換ができる設備を設けることを義務づけているところがあります。おむつ交換台には、主に「折りたたみ式タイプ」「据え置きタイプ」「柵のあるタイプ」の三つがあります。

 おむつ交換台の設置が増えれば、使用する人が増え、それに伴って転落事故が多発します。

 転落事故は、10年以上前から多発しています。2010年12月には、消費者庁から「 おむつ交換台からの転落による事故の防止について 」という報告が出ており、その中で「過去5年間に17件の情報や相談」があったとされています。また、それまでの取り組みとしては、07年には経産省から警告表示の徹底が要請され、国民生活センターからは注意喚起が出ていると記載されています。

  医療機関ネットワークの情報 では、19年までの約9年間に58件の転落事故がありました。6~8か月の乳児に多く、寝返りができるようになるころに多発しており、2歳のケースもありました。頭部を受傷することが多く、以下のような入院が必要な例もありました。

事例1: 4か月女児。2019年9月、子育て支援施設の洗面台の横の壁に設置されたおむつ交換台に子どもを寝かせ、保護者が数秒間、後ろを向いてバッグの中の物を取ろうとしたところ、泣き声がしたので子どもを見ると、床にあお向けになって泣いていた。頭頂骨および後頭骨骨折と診断され、6日間入院した。

事例2: 1歳8か月男児。2017年11月、スーパーのトイレにある折りたたみ式タイプのおむつ交換台から転落した。買い物の荷物が多かったため、おむつ交換台に荷物と子どもをのせたままで手を洗った。洗面台はおむつ交換台のすぐそばにあるため、子どもを見ながら手を洗っていたが、子どもが立ち上がり、荷物をよけて、おむつ交換台の横から落ちたように見えた。保護者は支えようとしたが、間に合わなかった。頭骨骨折、急性硬膜外血種と診断され、5日間入院した。

  東京都のヒヤリ・ハット調査「乳幼児の転落・転倒による危険」報告書 でも148例が報告されています。

約4割の人が危険な状況を経験

 0~3歳の子どもの保護者で、おむつ交換台を使用したことがある1000人を対象に、国民生活センターが20年1月に調査を行いました。5%の人が「おむつ交換台から落ちたことがある」、33%の人が「落ちそうになったことがある」と回答しました。約4割の人が危険な状況を経験していたわけです。落ちた子どもの4割(18人)が医療機関を受診し、入院したのは2人でした。子どもが落ちたり、落ちそうになったりした人のうち、74%の保護者は、備え付けのベルトがあったにもかかわらず締めていませんでした。8割の人が子どもから離れたり、目を離したりしていました。7割の人が、かばんから物を取り出したり、おむつなどのごみを捨てたりしていました。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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