子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
口の中の健康(3)3歳まで授乳 前歯溶け…卒乳遅れで重度むし歯リスク
このシリーズでは、大阪大の仲野和彦教授に聞きます。(聞き手・村上和史)
むし歯の原因となる糖分は、母乳にも含まれます。先日、複数の前歯が溶けるほどのむし歯で来院した女児(3)は、まだ卒乳できておらず、母親が寝かしつけるために授乳していました。乳幼児期における授乳の注意点を紹介します。
乳歯は生後6か月頃以降、前歯から奥歯にかけて生えていき、徐々にかめるようになります。ですから一般的に離乳食は6か月頃から1歳半頃にかけて食べ、卒乳を迎えます。
それでも、なかなか卒乳できない子はいます。夜泣きがひどければ、母親は睡眠不足で疲れ切ってしまい、寝かせようと母乳を与えてしまうでしょう。
ただ、眠っている間は口の中で唾液がほとんど出ず、舌もほとんど動かないので、歯の表面に膜のように付着した糖分は取り除けなくなります。子どもは乳首をくわえるようにして母乳を吸うので、まず上の前歯の裏側が茶色くなった後、次第に表側も黒く変色し、溶けてぼろぼろになります。
これが、卒乳できていない乳幼児に特徴的な重度のむし歯です。歯のケアを怠ったまま授乳したり、寝る前に哺乳瓶で甘い物を飲ませたりしていると、発症リスクが高まります。冒頭の女児は歯にズキズキという痛みがあったため、押さえつけてでも治療しなければなりませんでした。
一方で歯磨きを嫌がる子も少なくありません。その場合は寝る前に湿らせたガーゼで歯の表と裏を数回ほどでいいので拭いてください。専用のガーゼも市販されています。その上で歯ブラシに慣れる練習をして、前歯がたくさん生えてきた頃には歯ブラシで磨くようにしましょう。
【略歴】
仲野和彦(なかの・かずひこ) 日本小児歯科学会専門医指導医。大阪大卒。阪大准教授を経て2014年から現職。博士(歯学)。
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