後閑愛実&ゆき味「看取りのチカラ」
医療・健康・介護のコラム
「看取りのチカラ」第16話 医師が手書きに込めた思いとは 薄い紙一枚の「死亡診断書」が持つ重み
死因統計や医学研究の資料としても
死亡診断書は、パソコンで作成する病院もありますが、まだまだ医師の手書きのところも多いです。
昔、とても丁寧にゆっくり死亡診断書を書いていた医師がいらっしゃいました。「先生、奇麗な字を書きますね」と話しかけたところ、「こんな薄っぺらい紙一枚だけど、これでこの人が生きているって記録が消されるんだよ。だから、こんなに重い一枚はない」という言葉が返ってきました。
もちろん、死亡診断書をぞんざいに扱ったことはありませんでしたが、そこまで深く考えたこともなかったので、自分の浅はかさに衝撃を覚えました。それから私も、その重みを感じながら、死亡診断書を家族に渡すようになりました。
死亡診断書(死体検案書)は二つの大きな意義を持っています。
1・人間の死亡を医学的・法律的に証明する。
死亡診断書は、人の死亡に関する厳粛な医学的・法律的な証明であり、死亡者本人の死亡に至るまでの過程を可能な限り詳細に論理的に表すものです。したがって、死亡診断書の作成に当たっては、死亡に関する医学的、客観的な事実を正確に記入します。
2・国の死因統計作成のための資料となる。
死因統計は、国民の保健・医療・福祉に関する行政の重要な基礎資料として役立つとともに、医学をはじめ様々な研究においても貴重な資料となっています。その方が生きた証しは、その後の世の中に生かされていきます。
死亡確認が肉体的な死を認めることだとすると、社会的にも死を認めることと言えます。死亡診断書の提出は、家族にとっても大きな意義を持つ作業です。
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