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ワクチン1回分作製に数分「ミス許されず、スピードも要求」…大規模接種の舞台裏支える薬剤師

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 新型コロナウイルスワクチンの接種を進めるには、打ち手となる医師や看護師に加え、薬剤師の存在も欠かせない。感染対策の「切り札」として期待されるワクチンはどのように準備されるのか。神戸市の大規模接種会場「ノエビアスタジアム神戸」(兵庫区)で舞台裏を取材した。(諏訪智史)

 接種ブース裏に設けられた「薬剤室」。13日午前8時前から、スタッフだけが立ち入れるこの部屋に薬剤師ら14人が集まり、午前10時から始まる接種に向けた準備作業が始まった。

ワクチン1回分作製に数分「ミス許されず、スピードも要求」…大規模接種の舞台裏支える薬剤師

慎重にワクチンを準備する大河内さん(右)。地道な作業が終日続く(ノエビアスタジアム神戸で)

 会場への薬剤師の派遣は、全国に約600店舗の薬局を展開する「I&H(阪神調剤グループ)」(本社・兵庫県芦屋市)が一手に担う。同社の研修課長を務める大河内祐貴さん(35)は、ワクチンの扱いに不慣れな薬剤師への研修や勤務シフトの調整を担当し、自らも薬剤師として作業に加わる。

 ファイザー社製のワクチンは、2~8度の冷蔵庫で解凍後、生理食塩水で薄める必要がある。

 薬剤師は冷蔵庫からワクチンの瓶を取り出し、注射器で生理食塩水を瓶に注入。その後、別の注射器の針を瓶に刺して中身を吸い取って、1回分の量(0・3ミリ・リットル)を注射筒(シリンジ)に移した。

 1回分のワクチンを作るのに数分かかる。質を維持するには、シリンジ内に気泡が入らないよう慎重な作業が求められるためで、大河内さんは「作業自体は薬学部の実習でも経験するが、薬局勤めの薬剤師だと不慣れな人もいる」といい、「社内で作成した研修動画を事前に視聴してもらい、初日の人には改めて手順をおさらいします」と説明した。

 この日、午後7時までに接種を受けたのは約2000人。貴重なワクチンを限られた時間内に人数分用意する必要があり、薬剤師は真剣な表情で黙々と作業をこなした。

 実は最近、国から支給される注射器が、従来より扱いが難しい種類に変更されたことで、作業に時間がかかるようになったという。

 薬剤師1人が1時間に用意できるワクチンも約50人分から約30人分に減少し、大河内さんは「ミスが許されない中、スピードも要求されます」と苦労を語る。

 会場では7月中旬から、ファイザー社製とモデルナ社製のワクチンを曜日ごとに使い分ける体制に変わり、ワクチンの管理はさらに難しくなりそうだ。接種人数も1日5000人に増える予定で、より多くのスタッフが必要になる。

 I&Hの調剤薬局事業支援副本部長を務め、この日も会場で作業した薬剤師の小湊英範さん(60)は「一人でも多くの市民が接種を受けられるよう使命を果たしたい」と力を込めた。

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