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医療・健康・介護のニュース・解説

30年のひきこもり きっと変われる…58歳女性に100通のエール

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 30年以上にわたるひきこもりの末、高齢の父親を亡くして一人になった歩美さん(58)(仮名)からのSOSを先月30日のこのコーナーで紹介したところ、同じような悩みを経験した当事者の方たちから、100通を超すメールやLINE、手紙が届きました。

きっと変われる一歩ずつ

歩美さんへの励ましの手紙。メールやLINEでも多く届いた=枡田直也撮影

 〈必ず治ると、信じてほしい〉。パニック障害に苦しんだ経験をお持ちの兵庫県の絹江さん(63)(仮名)は、外出を恐れる歩美さんの症状と自身を重ね合わせ、そんな励ましを寄せてくださいました。

 絹江さんは阪神大震災(1995年)から少したったある日、特急電車の扉が閉まるのを見て、急に「外に出られない」と不安に襲われたそうです。症状がひどい時期には、レジで並ぶのが怖くて買い物にも出られないほどでした。

 特急電車に乗れるまでに回復するのに16年。診断と治療に加えて大切なのは、「小さな一歩」の積み重ねだとおっしゃいます。「買い物に行く」「美容院へ行く」……「新幹線で東京へ行く」。10段階の目標を書いたノートの余白には「できた!」などの書き込みも。一歩ずつ克服される様子がよく伝わってきました。

 「希望を持ってください」。歩美さんへの伝言です。

 関西在住の道子さん(60)(仮名)は、就職活動がうまくいかず、精神疾患を発症してひきこもりがちになった息子さんと暮らされています。知り合いの子どもが結婚した、孫ができた……。喜ばしいはずのニュースにも、気持ちが落ち込むとおっしゃいます。

 ただ、信頼できる行政の相談窓口の方との出会いが支えです。息子さんの将来を案じ、国民年金の保険料を代わりに払うことに、周囲からは「ほっといたら」との声も聞こえますが、愚痴にも耳を傾け、「いいことですね」と背中を押してくれる存在です。

 最近では道子さんも、聞き上手なその方をまねしています。息子さんの好きな野球や相撲の勉強をして、話に耳を傾ける。少しずつ会話も円滑になってきました。「『助けて』と声を上げて、伴走者を見つけてほしい。少しずつ、一つずつ、焦らず」。歩美さんへのメッセージは、自身への励ましでもあります。

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 持ち家があると生活保護は受けられないのか。歩美さんは受給には慎重ですが、行政の担当者も「まずは命の確保。頼ってもいいんですよ」とおっしゃいます。読者からも「方法があるはず」との連絡をいくつもいただきました。

 生活保護制度に詳しい岡部卓・明治大教授によると、持ち家でも受給できますが、資産価値が高い場合は処分が必要だそうです。ただ、自宅を担保に住み続けたままで生活資金の貸し付けを受ける「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」という制度もあります。「リバースモーゲージ」と呼ばれる仕組みです。「持ち家だからと諦めないで。まずは福祉事務所などに相談を」と助言してくださいました。

 歩美さん宛てのお便りを届けると、「変わりたいとの気持ちがより一層強くなりました。思い切って助けを求めてよかった」と喜んでおられました。最近は受診の準備で、社会福祉協議会の方と一緒に自身の症状を紙に書き出して整理しているそうです。歩美さんの「一歩」を今後も見守っていきたいと思います。

今回の担当は

 増田弘輔(ますだ・こうすけ) 今月から記者の取材を取り仕切る「デスク」。立場は変わっても、このコーナーを担当します。

身近な疑問や困り事、記事への感想や意見を寄せて下さい

 〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部「言わせて」係

 iwasete@yomiuri.com

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