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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

「顔がほてるのに手足は冷たく、ずっとイライラ」と訴える48歳女性…ストレスで増悪する更年期症状に良薬は?

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 今回は、痛みが主症状ではないものの、その症状のひとつとして、全身のあちこちに痛みを引き起こしていることが多い「更年期症候群」を取り上げる。更年期症候群はペインクリニックでの治療の適応となるのだ。

不定愁訴として扱われることが多く

「顔がほてるのに手足は冷たく、ずっとイライラ」と訴える48歳女性…ストレスで増悪する更年期症状に良薬は?

 Dさん(48歳)は、「肩がこるんです。それに顔がほてるんですが、手足は冷たくって。ずっとイライラしてるんです」と訴えて私の外来を訪れた。婦人科で「更年期です」と診断され、ホルモン療法を受けておられたが、「芳しくないんです。最近では朝早くに目が覚めてしまうし、熟睡感がないし、とにかく疲れが……」と付け加えられた。

 女性は、加齢により卵巣機能が低下し、やがて月経の停止を迎える。この閉経前後の期間を“更年期”と呼ぶ。この時期には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌減少に伴って、体の内部環境に激変が生じる。それまでホルモンによる調節を受けていた体のさまざまな部位に変調が生じて、多種多様な症状が一気に噴出するのである。

 エストロゲンの分泌は32~33歳頃をピークとして、徐々に減少し、閉経(平均50歳)に至る。この更年期は発症時期、その期間の長短、表面化する症状の強弱などには個人差があるものの、多くの女性が避けては通れないつらい時期と言える。この時期に一連の症状を呈する状態を更年期症候群と呼ぶ。顔面潮紅や発汗などの血管運動障害、不眠、イライラといった精神神経症状を中心に多彩な症状が表れるのだ。冷え、のぼせ、めまい、肩こり感、疲れやすさ、脱力感、 動悸(どうき) 、食欲不振などの訴えも多い。さらには、頭痛、首の痛みや五十肩、腰痛など、体のあちこちに筋肉痛や関節痛をも引き起こすのだ。

 なお、これら一連の症状は、外部(天候、家庭環境、社会環境)からの影響を受けることが特徴である。しかし、周囲からの理解を得られずに、“不定愁訴”として扱われることがあるので厄介だ。多くの女性が孤独な戦いを強いられているのである。

「星状神経節ブロック」で交感神経の緊張緩和

 治療は、婦人科でのエストロゲンとプロゲステロンの併用によるホルモン補充療法、精神安定剤の投与などが中心となるが、ペインクリニックでは、自律神経機能の改善、身体のバランスの調整を目的として 頸部(けいぶ) の交感神経節に局所麻酔薬を注入する「星状神経節ブロック」を行っている。週に2回のペースで20回程度を目安として行う。この星状神経節ブロックを行うことで、血液中のノルエピネフリン(全身の細胞の代謝、脳機能の調節を行っている)の量が減少することが確認されているのだ。このことは自律神経の一種である交感神経の緊張が穏やかになっていることを示している。

 Dさんは、婦人科での治療と並行して、まずは星状神経節ブロックから治療を開始した。また、“胸協苦満”(東洋医学で、上腹部の筋肉の張りが強い状態を指す)を確認したので 柴胡(さいこ)加竜骨(かりゅうこつ)牡蠣湯(ぼれいとう) を処方した。これらの治療を週に2回、計8回続けたところ、「症状は気にならない程度に軽くなりましたよ」とのことであった。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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