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「娘を返せ」母親激高も…一時保護でトラブル続出、児相苦慮

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「娘を返せ」母親激高も…一時保護でトラブル続出、児相苦慮

 5月下旬、仙台市内の20歳代の母親が県警に逮捕される事件があった。容疑は傷害と公務執行妨害。仙台市児童相談所の職員の肩を手で押すなどして、けがを負わせたとされる。取材を進めると、虐待を受けた子どもらを児相が家庭から引き離す一時保護を巡る、親と児相の対立という問題が浮かび上がる。(榎戸さくら、松下聖)

「激高してしまった」

 

 関係者によると、この母親の小学校低学年の長女が児相に一時保護されていた。理由は「育児放棄」。母親は数日にわたって「娘を返せ」と児相に要求し、職員との面談中にトラブルになった。調べに対し、「話をしていて激高してしまった」と話したという。仙台地検は11日、この母親を処分保留で釈放した。

 同市児相の担当者は一般論と前置きし、「一時保護する際は、親の子育てを否定するような言い方になるため、激しいやり取りになることもある」と明かす。一日に複数のトラブルが起こることもあるという。

4年間で2・3倍

 

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子育て相談や親の心の支援、里親委託など多様な業務を行っている仙台市児童相談所(仙台市青葉区で)

 県内4か所の児相と1支所が2019年度に行った一時保護は609件。うち仙台市内が412件(約67%)を占める。同市では16年度以降、毎年増加して4年間で約2・3倍になった。

 同市児相の中村洋所長は「都市部の仙台市では人とのつながりが希薄になりがちで、思い詰めた親が親族以外の人に助けを求めにくい」と分析する。

 子育て相談を行う「のびすく宮城野」の萌出留理子館長(69)はコロナ禍を踏まえ、「子育ての悩みや、親族と行き来できないストレスをはき出す場がない。今聞いてほしい、という保護者の願いがかなわない」と危惧する。

 一時保護を巡るトラブルが事件に発展する一方、一時保護の終了後に事件が起こるケースもある。

 昨年6月には生後7か月の娘を揺さぶってけがを負わせたとして、県内の30歳代の母親が傷害容疑で逮捕された。県中央児相が同年2月~3月下旬に娘を一時保護し、母親のもとに返した後の事案だった。母親は不起訴となったが、関係者によると、娘は今も治療中という。

 県中央児相の遠藤哲也総括次長は「家庭に返すかどうかの判断は難しい。一時保護が終わった後の支援も大事だが、親に不信感を抱かれるとやりにくい」と打ち明ける。

 

透明性の確保

 

 厚生労働省は、児相の判断のみで行ってきた一時保護について、家庭裁判所の承認を得ることを広く義務付ける検討に入った。司法が関与することで手続きの透明性を高め、親と児相の対立を和らげる狙いもある。

 しかし、同省が全国の児相に行った実態把握調査では、業務が増え、迅速な一時保護が阻害されるとして、約7割が司法審査の強化に反対している。遠藤総括次長も「事務手続きが煩雑化し、子どもの安全確保に間に合わなくなってはいけない」と懸念を示す。一時保護のあり方をめぐる模索は続く。

 ◆ 一時保護 =子どもの安全を確保するため、児童相談所の判断で親権者から原則2か月以内で引き離す緊急措置。虐待や育児放棄、子どもの非行などが理由になる。開始時に子どもや親の同意は必要ないが、親の同意なしに2か月を超えて一時保護する場合は家裁の承認が必要。

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