産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
おじさん管理職、今の仕事で“卒業”したいが、潮流は変わった……変化に対応できた人の共通点は?

イラスト 赤田咲子
私は精神科産業医をしています。最近、「おじさん管理職」からの相談が増えています。彼らはメンバーシップ型雇用である年功序列制度のもとで、転勤を繰り返しながら昇進しました。長時間労働もいとわず、単身赴任もこなしてきたのです。彼らは経済成長や安定した時代に頑張って適応してきた人たちです。
しかし、時代は変わりました。今、多くの企業が進めているのは、海外市場や新規分野の開拓と、IT技術活用による社員削減(リストラ)でしょう。このように社会変動の真っただ中にいる彼らは、自分のこれまでの業務喪失に戸惑い、新規の仕事ができるかどうかの不安と、「なぜ、今までの功績が認められないのか」という不満の中で苦悩しています。
最近、このような状況に置かれた48歳から57歳の中高年者10人にカウンセリングを行い、うち3人が新しい環境に適応できました。うまくいった人の共通点について紹介します。
メーカー勤務、50歳の業務サポート部長、遠藤太郎さん(仮名)と、サービス会社課長の47歳、渡辺次郎さん(同)の2人にご登場いただきます。
関連会社か、海外関連業務か……納得できず不眠が続く
産業医 :産業医の夏目です。メンタル相談をしています。
遠藤さん:業務サポート部長の遠藤です。最近、不眠が続いています。
産業医 :寝付きが悪いのか、夜中に目覚めてしまうのか?
遠藤さん:なんだか頭がカッカするようで寝付きが悪いんですよ。
産業医 :何かストレスがありますか?
遠藤さん:43歳まではシステム制作をしてきました。しかし、体力もシステム制作のスキルにも限界を感じて、サポート部の課長にしてもらいました。システム制作のサポートや企業のIT機器の補修点検という裏方の仕事ですね。
産業医 :それで?
担当業務が外注となり異動を迫られる
遠藤さん:ところが、業績が悪化した関係で、私たちの仕事が関連企業に外注されることになって、人事から「関連会社に移籍するか、それとも海外進出企業のシステム制作か、どちらかを選択してほしい」と言われたんです。「何をいまさら」と怒りがこみ上げてきて……。
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