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リングドクター・富家孝の「死を想え」

医療・健康・介護のコラム

なぜ、医者だけがミスを起こしても免責されるのか?……心臓カテーテル検査のミスで遺族に謝罪、賠償金の衝撃

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 連日、コロナの報道が続くなか、6月2日、医療ミスによって死亡した80歳代の女性に対して、賠償金が支払われるというニュースが報道されました。医療事故を病院側が認めて謝罪するという例は、最近はほとんど聞かないので、正直、私は驚きました。

 報道によると、医療ミスを起こしたのは岐阜市民病院で、院長らが市役所で記者会見し、「亡くなった患者と家族に多大な心痛を与え、申し訳なかった」と謝罪。市側は、遺族との和解に基づく損害賠償金約1890万円を盛り込んだ補正予算案を市議会に上程するといいます。

動脈と静脈を間違えて針を刺した

なぜ、医者だけがミスを起こしても免責されるのか?……心臓カテーテル検査のミスで遺族に謝罪、賠償金の衝撃

 被害女性は、昨年1月、急性心不全で入院。治療方針を決めるために、循環器内科の医師が心臓カテーテル検査を実施しました。ところが、この医師は、本来なら首の右側の静脈に針を刺すはずが、誤って近くの動脈に刺してしまったのです。そのため、カテーテルが挿入しにくくなってミスに気付き、慌てて心臓血管外科の医師に処置を頼んだといいます。しかし、血流が滞って血栓ができ、すでに脳こうそくを起こしていたようです。

 その後、脳神経外科の医師も続けて手術したといいますが、意識不明のまま回復せず、昨年9月に心不全から起こる不整脈で、患者さんは死亡したのです。

 以上の経緯からみて、医療ミスは明らかです。しかも、最も注意すべきところを間違えてしまった、ということです。

 心臓カテーテル検査は、カテーテル(細長い管)を心臓の血管まで通して行い、血液の流れや心臓の動きをリアルタイムで見ることができます。カテーテルは、足の付け根、首、胸、腕、手首などの動脈や静脈から入れますが、局所麻酔を行っているので、患者さんに痛みはほとんどありません。

 かつて心臓カテーテル検査というと、足の付け根から入れる極めて大掛かりなものでした。また、検査終了後も長時間の安静が必要なため、危険なイメージがありました。しかし、検査技術の進歩により、いまでは簡単かつ短時間で済む検査になりました。通常は30分から1時間程度で終了します。

 私もこれまで3回、狭心症による冠動脈の手術を受けており、そのたびにカテーテル検査を経験しています。検査中になんらかの異変が起こり、それを見過ごして検査を続けて脳梗塞を起こした。また、カテーテル挿入中に血管内を損傷させてしまった。あるいは、検査終了後に止血が不十分であったなどのケースは、これまで報告されて、裁判になっています。しかし、針を刺す場所を間違えるミスが訴訟などになったのをあまり聞いたことがありません。

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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