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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナがもたらす外国人の生活困窮 公的支援には在留資格の壁も

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稲葉奈々子・上智大学教授が語る

新型コロナがもたらす外国人の生活困窮 公的支援には在留資格の壁も

記者会見する稲葉奈々子・上智大学教授(6月7日、日本記者クラブのオンライン会見画像から)

 新型コロナウイルス感染症の流行は、社会のより脆弱(ぜいじゃく)な部分に、深刻な影響を及ぼしていることが指摘されている。反貧困ネットワーク理事、特定非営利活動法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」運営委員を務める稲葉奈々子・上智大学総合グローバル学部教授は6月7日、日本記者クラブで記者会見(オンライン)し、コロナ禍で日本に住む外国人が生活困窮に陥っている現状や、在留資格がなく公的支援が届かない外国人を民間や地域社会が支えている実態を訴えた。

 稲葉教授によると、反貧困ネットワークが呼びかけ、移住連貧困対策プロジェクトチームも参加して昨年5月に始めた生活支援キャンペーン「緊急ささえあい基金」には、今年5月までに外国人から約1300件、支援金額で4000万円余りの申請があった。同基金は日本人も含めた困窮者の支援を目的としたものだが、支援のための支出額の約7割を外国人が占めた。

 定住のシングルマザーや技能実習生などをはじめとするフィリピンやベトナムなどアジアの国々、難民申請中の人も多いアフリカ各国、出稼ぎ労働者が多いペルーやブラジルなどのラテンアメリカ、クルド人が多くを占めるトルコなど国籍は様々で、対象者の内訳も国によって違いがある。

最後の砦の「生活保護」 申請をためらう理由とは

 新型コロナウイルス感染症の流行が、なぜ外国人の困窮をもたらしたのか。稲葉教授は、最後の砦(とりで)である生活保護でさえ、利用できる外国人は定住、永住資格を持つ人などに限られる問題点を指摘する。そのうえ、たとえば定住者であっても実際に生活保護を受けると、「次の在留資格の更新がされないのではないか」などという不安から、申請をためらうケースも多いと説明する。

 また、第二のセーフティーネットである生活困窮者自立支援制度や求職者支援制度は、国籍や在留資格の要件がないものの、現実的には日本語の読み書きができないと利用できないのが実態だという。

 今回のコロナ禍が深刻なのは、日本に住む外国人の中でも安定した在留資格を持つラテンアメリカ出身者の中でさえ、派遣の工場労働を解雇され、日雇い労働者として各地の現場を転々とせざるを得ない人が現れたことだという。住居を失ってホームレスになる恐れがあり、すでに一部では現実になっているとしている。

 ましてや、在留資格のない仮放免の外国人は就労も認められていない。コロナ禍以前は、在留資格がある家族や親戚から生活の面倒をみてもらっていたケースも多いとされるものの、コロナ禍によって在留資格がある家族が失業するなどして、生活を支えていたものが揺らいでいる。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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