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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

医療・健康・介護のコラム

えっ、あごの梅干ししわは口呼吸のサイン?

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 口をそっと閉じてみてください。そして自分の下あごを触ってください。ツルンとしていたら大丈夫。もしデコボコと筋肉の緊張が手に伝わってくるようなら、口呼吸の可能性があります。

 わかりにくい方は鏡で確認してください。この部分を頤(オトガイ)といい、梅干し状のしわを作るのがオトガイきん。ふだん口を開けていたり、口を閉じておくのがつらかったりする人は口閉時、この筋肉がより強く収縮して梅干し状のしわになります。通常は嚥下えんげ動作でも目立つことがないのですが、異常嚥下の際には、やはり、しわとなって現れます。ですから、口呼吸かどうかの診療には、こんなちょっとした筋肉の使い方もヒントにして視診を行っています。 

えっ、あごの梅干ししわは口呼吸のサイン?

5年前、オトガイの梅干し状のしわが目立つRさん

えっ、あごの梅干ししわは口呼吸のサイン?

上と下の前歯がかみ合っていない

出っ歯は口呼吸の可能性

 Rさんは30代の医師。「だんだん前歯が出てくるようになった」と、私の友人の歯科医に相談に見えました。かみ合わせを見てみると、上の歯と下の歯がかみ合わず、すき間があります。これを 開咬(かいこう) といいます。これでは食物を前歯でかみちぎることができず、 咀嚼(そしゃく) もきちんとできなくなります。

 Rさんには肩こりや歯ぎしり、いびきといった症状もありましたが、なによりSLE(全身性ループスエリテマトーデス)という自己免疫疾患に、ITP(免疫性血小板減少症)が合併していました。これらの病気は“原因不明”とされていますが、こんな時は、どこかに慢性へんとう炎や口腔こうくう内疾患など原病巣が隠れているのではないかと考えながら診察します。病巣疾患である可能性が高いからです。そして、さらにその原病巣を作る原因となるのが口呼吸なのです。

 口呼吸診療に慣れた医師・歯科医師であれば、すぐにこの状態は慢性的口呼吸だとわかるのですが、さて、どうしてこんなかみ合わせになってしまうのでしょうか。

 これには舌の位置が深く関係します。舌はふだん口を閉じている時は上あご、つまり口の天井部分にペタリとくっついています。飲み込む時も舌が上あごをぐっと押しつけるようにして嚥下反射が進んでいきます。子どもの時には、この力によって上あごが左右に広がり、大人の歯が生えるスペースができていくと同時に鼻の容積が広がり、より鼻呼吸しやすくなります。

 ところが舌の力が弱かったり、舌の使い方に変な癖(これを舌癖といいます)があったりすると上あごが広がらず、鼻の容積も増えないため、口呼吸に陥ってしまいます。舌癖には様々ありますが、飲み込む時に舌を前に出す癖があると、このような開咬になってしまいます。いわゆる出っ歯ですね。本来は唇が“押さえ”の役目をしているので、出っ歯にならずに済むのですが、口を閉じることを意識しなければ、どんどん出っ歯になっていくのです。

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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