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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

「あの患者さん、ほんまは痛くないんやわ」と看護師は言うが…痛みを癒やすプラセボ(偽薬)の有用性

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 “プラセボ”(プラシーボ)とは偽薬、つまりはダミーの薬のことであり、ラテン語のPlacebo(喜ばせる、楽しませる)との言葉に由来している。17世紀までの医療では、効果を持たない薬のことをプラセボと呼んでおり、1811年に出版された「フーパー医学事典」には、「患者に恩恵を施すというよりは、患者を満足させるための薬」と定義されている。つまり、見かけは本物だが、有効成分が入っていないダミーの薬を意味しているのだ。

 現在の統一見解として、「医学大辞典」(医学書院刊)に、プラセボとは「薬効評価の対照に用いられる、あるいは症状を解消したり患者の要求に応えたりするために処方される、薬理学的活性がないとされる物質」とある。なお、本物だと信じて疑っていない方にプラセボを投与した場合に効果が表れる現象を“プラセボ効果”と呼んでいる。また、本物の薬による副作用についての説明を受けている場合には、プラセボであっても副作用が出てしまうことがあり、これを“ノセボ効果”と呼ぶ。

薬物依存の防止目的でもプラセボ処方

「あの患者さん、ほんまは痛くないんやわ」と看護師は言うが…痛みを癒やすプラセボ(偽薬)の有用性

 プラセボを用いた検討は、新しく開発された薬物の薬効を評価する場合などに使われており、新薬が認可されるためには、プラセボによる検討が義務付けられている。患者さん(同意を得ている)を二つのグループに分けて、一方のグループに新薬、他方には外見が本物そっくりのプラセボを投与して、その効果を比較するのである。

 精神を病んでおられる患者さんでは、果たしてその訴えが器質的な異常によるものか、心理的な要因によるものなのかを判別するために用いることもある。さらには、たとえば患者さんが引き続いての睡眠薬の処方を強く希望される時に、連用による薬物依存の防止を目的として、プラセボを処方することもある。先に紹介した「医学大辞典」では、「慢性疾患や精神状態が影響を及ぼしやすい疾患に対しては、まったく作用のない物質を投与しても高い治療効果を得ることがある」とある。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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