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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

医療・健康・介護のコラム

お金も道具も要らない世界一簡単な健康法は?

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口を閉じるためにできること

お金も道具も要らない世界一簡単な健康法は?

 ではこの口ポカンという“悪い癖”を直すために、何ができるのでしょうか。あいうべ体操を実践して口ポカンを減らした小学校を紹介しましょう。

 岐阜県白川町の白川病院歯科部長の中島正人さんは、町内の学校の学校歯科医も担当しています。子どもたちの口ポカン、口呼吸の増加を心配した白川北小学校(当時)からの依頼により、2013年から学校歯科保健活動の一環としてあいうべ体操を採り入れました。

 定期的な“健口”指導を歯科医師、歯科衛生士が担当し、かむことの大切さや虫歯にならないためのおやつの選び方などを伝えます。学校にはあいうべ体操の時間があり、みんなで一斉に口の体操を行います。

口を閉じると虫歯もインフルも減少

 “健口”指導開始直後に全学年を対象にした調査が行われ、口ポカンの判定は子どもたちの様子をよく観察している養護教諭が担当し測定しました。すると、「口がかなり開いている」子は32%に達し、「少し開いている」「たまに開いている」まで含めると、なんと全体の67%に達しました。実に全児童数の3分の2に程度の差はあれ、口ポカンが認められたのです。

 この状態から、あいうべ体操を始めて1年3か月後には、開いている子は全体で46%、2年後には38%にまで減少しました。「かなり開いている」子は9%となり、調査開始から約3分の1に減りました。さらに、なんと、この小学校では虫歯の数もインフルエンザの 罹患(りかん) も、他の学校と比べて減少しました。まさに学校における上流医療が展開されています。

ポカン口をしている子の割合(数字は%)
かなり開く 少し開く たまに開く 全体
開始直後 31.7 20.0 15.0 66.7
1年3か月後 15.4 19.2 11.6 46.2
2年後 8.5 23.4 6.4 38.3

口腔機能発達不全症にあいうべ体操

 もちろん、指導などの人件費や労力はかかりますが、子どもたちがあいうべ体操に費やしたお金はゼロです。道具は一切要りません。口を閉じることは、元気な体を作っていく第一歩、しかも無料で取り組めます。しない理由がありません。こんなこともあって、学校や歯科医院などで口腔機能発達不全症治療の一環としてあいうべ体操を採用するところが増えました。

 いかがでしょうか。子どもや孫のマスクが外れた時、その口は開いているでしょうか、閉じているでしょうか。答え合わせをしてみませんか? そしてお互いに素顔で見つめ合って、ニッコリとほほ笑んでみるのも良いでしょうね。

 電車の中で、図書館で、映画館で、スーパーで、マスクをしている人の口は開いているでしょうか、閉じているでしょうか。そしてあなたの口は?(今井一彰 みらいクリニック院長・内科医)

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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