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新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

甲状腺がん、肺がんを経験。医療者と患者との「垣根」をなくしたい

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 ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

飯村隆志(いいむら・たかし)さん

【今月のゲスト】
飯村隆志(いいむら・たかし)さん

 NPO法人健康サポーターJAPAN理事長。27歳で医療機器メーカーに転職し、入社研修時に甲状腺の腫瘍を自ら発見、2年後に手術。その5年後には定期検査で肺がんが見つかり手術を受ける。自分の人生を振り返り、2度のがんの経験が持つ意味、自分の使命に気づく。病気のことで悩む患者・家族のサポートとともに、患者を含む医療、福祉に関わるすべての人が笑顔になる社会を実現するために活動をしている。
・NPO法人健康サポーターJAPAN https://kenkosupporter.org/

NPO法人健康サポーターJAPNの飯村隆志さん(下)

甲状腺がん、肺がんを経験。医療者と患者との「垣根」をなくしたい

相談に応じる飯村さん(奥、飯村さん提供)

 のんびりしている今日のカフェ。初めて見るお客さんが入ってきた。奥の席にいたNPO法人健康サポーターJAPAN理事長の飯村隆志さんが軽く手を上げると、不安気な初老のその女性は彼に会釈をした。

 奥のテーブル席は、他の席との間に柱がある。込み入った話をするにはちょうどよい。女性は、これからがんの治療を始める方のようだ。飯村さんは彼女の相談に乗るらしい。

 1時間ほど話していただろうか。彼女の方が先に帰って行った。その顔は、入店してきた時とは違い、どこか晴れ晴れとした雰囲気だった。

 私は、彼女のカップを下げに行き、飯村さんに声をかけた。

 「お疲れさまでした」

 「やはり、こうやってゆっくりと一対一で話を伺うことは大切なんですよね」

 それは、帰った女性の表情を見ればわかる。

一対一で話を聞く「訪問型相談支援」

 自分のがんの治療が落ち着いている彼は、4年前に、ある団体を設立した。理事長を務めるNPO法人健康サポーターJAPANだ。活動の柱の一つが、「訪問型相談支援」だ。

 大勢の人がいる場だと話せない、家族に聞かれたくない、誰かに直接話を聞いてほしいという方を相手に、今回のように指定された場所に彼が出向いて相談に応じるのが、「訪問型相談支援」だ。話す内容は、病気そのものについてよりも、「なぜ生きたいのか?」「どう生きたいのか?」といった、人生観に関わることが多いという。

 私自身もがんの罹患(りかん)経験がある。治療に臨む際には、自分の望むことを1枚の紙にまとめ、医師へ渡した。だが、多くの患者は、そのようなことを考えたり、ましてや医師に文書で渡したりした経験はないと思う。

 しかし、私は思う。本来、患者自身の希望を、しっかりと医師へ伝えることが、治療のスタートなのだ。

 一対一でじっくりと話すことで、自分の思いや考えが整理される。本当に大切なことは何かという気づきも生まれるだろう。

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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