山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
夏に増える子どもの転落…3メートルの落下は0.78秒 助けは間に合わない
転落している間に助けられる?
東京消防庁のデータから、各年齢で、どこから落ちたのか、多いものから順に挙げてみましょう。
- 0歳: ベッド、人、ソファ、階段、ベビーカー
- 1歳: 階段、いす、ベッド、ソファ、自転車の補助いす
- 2歳: 階段、自転車の補助いす、いす、人、ベッド
- 3~5歳: 階段、自転車の補助いす、いす、ソファ、滑り台
- 6~12歳: 階段、滑り台、うんてい、その他の遊具、鉄棒
- 13~18歳: 階段、跳び箱、軌道敷、屋根、ベッド
これらは、救急搬送されたデータですので、重症度が高い転落例と考えていいと思います。それぞれの年齢の子どもの発達段階で、子どもの周りにあり、よく使われているものからの転落であることがわかります。
転落による傷害は、高い位置にある体の位置エネルギーが、転落・落下によって運動エネルギーに変換され、接地面との衝突により、比較的小さな領域の身体組織に運動エネルギーが吸収されることによって生じます。組織の破壊は、作用する身体部位の大きさが小さい、すなわち「とがっているものとの衝突」ほど大きくなります。
転落を予防するには、
- 〈1〉転落している間に助ける
- 〈2〉転落の際の衝撃を少なくする
- 〈3〉転落しにくい環境を整備する
などがあります。
〈1〉の方法の実現可能性を考えてみましょう。物理の方程式を用いて計算した落下の高さと接地面への到達時間は
落下の高さ 接地面への到達時間
0.5m 0.3秒
1.0m 0.45秒
2.0m 0.63秒
3.0m 0.78秒
このデータを見ると、3メートルの高さからの転落でも、1秒にも満たない時間で落下してしまうため、近くで見ていても助けることは難しいことがわかります。そこで、子どもたちが転落しやすい状況を知り、転落の衝撃を少なくする方法や、転落しにくい環境を整備することが必要なのです。次回から、各年齢層で起こる重症度が高い転落例を紹介し、どうしたら予防できるかを考えます。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)
- 参考文献:
- 1)Peden M,et al.:World report on child injury prevention.World Health Organization(WHO),2008
2 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。