文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

抗がん剤治療中です。ワクチン接種はいつ受ければよいでしょうか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

がん治療とワクチン接種の両立を

 がんに対する治療も重要ですので、そのスケジュールを守りながら、早めのワクチン接種をするのが望ましく、多くの場合はその両立が可能です。がんの種類や病状によっては、がん治療を優先すべき状況もありえますが、がん治療を継続しながら、適切なタイミングで接種も受けられるように、担当医と相談しておくことが重要です。病院によっては、方針をホームページなどで示しているところもありますのでご確認ください。

 読者の方から、「左乳房とわきの下のリンパ節をとる手術を受けているのですが、左腕への接種は避けた方がよいのでしょうか」という質問もありました。手術した側の腕に接種することで、リンパ浮腫などのリスクが上がる可能性は否定できません。選べるのであれば、反対側の腕に接種してもらうのがよいでしょう。また、接種後、わきの下のリンパ節が腫れることがあり、がんのリンパ節転移とまぎらわしくなるため、乳がんの治療中の方も、がんのない側の腕に接種してもらう方がよいでしょう。両側の乳がんの方など、判断がつかない場合は、担当医とご相談ください。

 がん治療中のワクチン接種に関する専門家の見解をより詳細に知りたい方は、 日本癌(がん)治療学会,日本癌学会,日本臨床腫瘍学会の3学会が作成したQ&A もご覧ください。新しい情報や研究成果が次々と出ていますので、今後、専門家の見解が変わっていく可能性もあるということは、ご注意ください。

トラブルやミスを責め立てるより…

 ワクチン接種は、接種を受ける人のためであると同時に、社会全体の感染を抑え、コロナを乗り切るためのものです。できるだけ早く、できるだけ多くの方が接種を受けられるよう、お互い協力し合いながら、取り組んでいきたいものです。

 報道では、ワクチン接種をめぐるトラブルやミスが連日取り上げられていて、接種の現場には 委縮(いしゅく) した雰囲気もあるようです。トラブルやミスを責め立てるよりも、それをよりよい接種体制につなげられるような社会全体の「心の余裕」も必要なのだと思います。

 2020年9月3日のコラム「 がんもあって、コロナもあって、どうすれば『自分らしく』生きられますか? 」では、コロナやがんという病気では、「病気そのもの」が「不安・恐れ」を生み、「偏見・差別」につながり、さらに病気を深刻なものにするという、「悪循環」を紹介しました。この悪循環を断ち切り、病気があっても、「心の余裕」を保ち、「思いやり・感謝」につなげ、病気と共存しながら乗り切っていけるような「好循環」を作っていく必要があります。ワクチン接種は、その良いきっかけになるかもしれません。進んで接種を受けに来てくれる皆さんに感謝し、接種の業務に携わっている自治体や医療従事者などの皆さんに感謝し、お互いを思いやりながら、心の余裕をもって取り組んでいけるとよいと思っています。

 今なお、感染の第4波が続き、緊急事態宣言などもあって、大変な思いをされている方々が多くおられます。ワクチン接種が順調に進み、第4波を最後に、終息に向かうことを願っています。そして、たとえコロナがあっても、がんがあっても、悪循環に陥ることなく、好循環で支え合い、共存できるような社会になることを願っています。(高野利実 がん研有明病院乳腺内科部長)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

takano_toshimi_120-120

高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」の一覧を見る

最新記事