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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

抗がん剤治療中です。ワクチン接種はいつ受ければよいでしょうか?

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 新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化し、この話題が連日報道されています。がんの患者さんの関心も高く、診察室では、ほぼ必ずと言っていいくらいワクチンの話が出ます。医療従事者に続き、65歳以上の高齢者への接種が進んでいて、今後は「65歳未満でがんなどの基礎疾患のある方」や「それ以外の方」の接種も開始される見込みです。

抗がん剤治療中です。ワクチン接種はいつ受ければよいでしょうか?

イラスト:さかいゆは

「できるだけ早く、打てるときに打つ」が原則

 2021年4月21日のコラム「 がん患者も新型コロナワクチンを打った方がよいのでしょうか 」で、がんの患者さんは特にワクチン接種をした方がよいと書きました。がんを患っていない人も含め、現時点では、「ワクチン接種をしない方がよい」という人はほとんどいません。

 副反応が怖いという方も多くおられると思いますが、副反応というマイナス面よりも、ワクチン接種によって新型コロナ発症を防ぎ、社会全体の感染を抑えるというプラス面の方が大きいと考えられます。今はとにかく、できるだけ多くの方が速やかにワクチン接種を受けることが重要です。「ワクチン接種を受けられるのであれば、早めに受けてほしい」というのが、がん患者さんを含むすべての方々へのアドバイスです。

 ワクチン供給不足や、予約システム・接種体制の不備により、だいぶ混乱もありましたが、今後は改善が見込まれますので、あまりあせらず、心の余裕を持ちながら、早めに接種を受けていただきたいと思います。

 最近いただくことが増えた質問は、「ワクチン接種のタイミング」です。抗がん剤治療中の方、ホルモン療法中の方、放射線治療中の方、手術を予定している方などから、「ワクチン接種はいつ受ければよいでしょうか?」と聞かれます。

 私は、「タイミングを気にしすぎることなく、できるだけ早く、打てるときに打つ」のが原則だと説明しています。ただ、接種のタイミングを選択できるのであれば、以下の点も考慮するとよいでしょう。

〈1〉がん治療によってワクチンの効果が減弱する可能性
 抗がん剤投与の当日、および、2日後くらいまでは、できればワクチン接種は避けた方がよさそうです。副作用で体調がよくない可能性もありますし、吐き気を抑える目的などで使われるステロイドが、ワクチンの効果を減弱させてしまう可能性も指摘されています。また、抗がん剤によって白血球が最も下がる時期がわかっていれば、その時期も避けた方がよさそうです。

〈2〉ワクチンの副反応でがん治療に影響が及ぶ可能性
 日本の医療従事者を対象に行った調査では、1回目接種後に3%、2回目接種後に38%の方に、37.5℃以上の発熱がありました。副反応は2回目で強い傾向があり、2回目接種後には、69%の方が 倦怠(けんたい) 感(だるさ)を経験しました。接種の翌日に発熱やだるさが起き、1~2日でおさまることが多いようですので、病院に行く予定や治療の予定が決まっているのであれば、その前2日間は、接種を避けた方がよさそうです。もし発熱があった場合、それがワクチン接種の副反応によるものであったとしても、発熱した時にはコロナ感染の可能性も考慮しなければなりませんので、予定していた治療や手術を延期することになります。

 このような理由から、接種のタイミングを選べるのであれば、抗がん剤投与日と、その前後2日間ずつは、接種の予約を入れるのは避け、抗がん剤投与の合間で体調がよい時期を選ぶのがよさそうです。

 分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬、内服の抗がん剤、ホルモン療法などでは、タイミングはあまり気にせずに接種してよさそうですが、病院に行く予定の日の直前は避けた方がよいでしょう。

 放射線治療で、週5日(月~金)の照射を行っている場合は、金曜日に接種するのがよさそうです。手術予定がある場合は、手術直前の接種は避けた方がよいでしょう。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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