楢戸ひかる「シニアライフの羅針盤」
医療・健康・介護のコラム
実家を相続する人、知ってますか? 遺留分は原則「金銭支払い」になりました
約40年ぶりに民法(相続法)が大きく改正されたことは、「 配偶者居住権 」と「 特別寄与料制度 」のコラムでご紹介しました。
相続専門税理士の 廿野幸一 さんは言います。「実は、今回の法改正で最も押さえておきたいのが、『遺留分制度の見直し』なんです。なぜなら、実家の相続などにも関係のある話だからです」(本記事で紹介する制度などに関する情報は、2021年5月末時点のものです)

イラスト:平松昭子
遺留分って、何ですか?
そもそも、「遺留分」という言葉自体、聞き慣れないですよね。遺留分とは、「ある一定の相続人が、被相続人(亡くなった人)の財産から、法律上もらえる最低限の取り分」です。
例えば、「夫婦+子供2人」という家族で、父が遺言書を用意していなかった場合、遺産は相続人全員で話し合って分ける必要があります。
「私は、遺言書がない場合の遺産分割は、相続人のみんながよければ、どんな分け方をしてもいいと考えています。ただし、遺産を分割する話し合いでもめてしまい、各相続人が権利を主張した場合、分ける目安として『法定相続分』という考え方があります。上記のケースでは、法定相続分は、配偶者が2分の1、子供が各4分の1です」(廿野さん)
ところが、仮に父が、「愛人Aに全額、遺贈する」という遺言書を作成していたら、赤の他人のAさんが全額を取得することになってしまいます。それではあんまりなので、相続人が配偶者、子供、父母の場合は、民法で「最低限の取り分」が保障されています。これが「遺留分」です。遺留分は法定相続割合の原則半分 (※) です。
※相続人が父母だけの場合は「3分の1」となる。兄弟姉妹の遺留分はなし
「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」に
今回の法改正では、それまでの「遺留分減殺請求権」が、「遺留分侵害額請求権」になりました。字面で見るとわかりづらいのですが、 ポイントは、「侵害額」という文字 です。
具体例で考えてみます。
自宅の所有権は父親が持っており、弟は正社員であること、娘はパート勤めで介護をしてくれたので、父親は「娘に実家を相続させる」という遺言書を作成してありました。けれども、相続財産は、ほぼ「実家」しかないので、弟は、この状態が不服です。
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