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30年ひきこもった58歳女性 父を失い一人に…自宅手放さないと生活保護受けられず

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 <ひきこもり生活を送る中、親が亡くなり、一人になりました>。4月の大型連休前、便箋2枚につづられた封書が社会部に届きました。

ひきこもり30年父失い一人に

父親が生前に愛用していた携帯ラジオを手にする歩美さん。亡くなってしばらくは仏壇でラジオを鳴らしていた(20日、大津市で)

 差出人は大津市の歩美さん(58)(仮名)。 几帳面きちょうめん な文字からは、長引く今の生活への不安と、何とか脱却したいという思いがない交ぜになっていることがうかがえました。

 力になれることがあるのだろうか――。手紙に書かれていた番号に電話しました。

 最初に電話した時、留守番電話でした。メッセージを残し、翌日にかけ直すと「記者さんですね」と少し緊張気味な声で出てくれました。

 歩美さんの話では、ひきこもり生活を始めてから30年以上になるそうです。

 高校時代はテニスに打ち込んでいましたが、卒業後に就職したその年、病気がちだった母親が亡くなり、間もなく 動悸どうき やめまいに襲われるようになったそうです。

 26歳の時に会社を辞めてから発作への恐怖で外出できなくなりました。2人暮らしの父親に買い物を任せて家事をして過ごし、趣味もなく、新聞を読んだり、テレビを見たりすることが楽しみでした。

 外出が怖くて受診していませんが、「パニック障害」の一種だと考えているそうです。

 父親が70歳を前に仕事を辞めてからは年金が頼りに。「お父さんがいなくなったらどうするんや」。2018年に90歳で亡くなる数年前、寡黙だった父親がふと口にしたことがあります。娘の将来を案じた一言だったのでしょう。

 「身を削って私を守ってくれた」という父親を失い、貯金も減るばかり。父親の思い出が残る自宅を手放さないと、生活保護も受けられません。

 19年秋、地元の社会福祉協議会が中高年のひきこもりの電話相談をするとの新聞記事が目に留まりました。思い切って電話すると、職員が自宅を訪問してくれ、親身に相談に乗ってくれました。しかし、仕事の紹介の話が進み出した矢先、コロナ禍で話は立ち消えに。職員の訪問を受けるのも難しくなったそうです。

 80歳代の親とひきこもりの50歳代の子どもが社会から孤立する問題を「8050問題」と呼びます。19年に40~64歳のひきこもりの人が約61万人に上るとの推計が内閣府から初めて公表されました。

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 自治体や民間団体が支援していますが、NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の池上正樹理事(58)は「コロナ禍で社会につながろうとした人が元の生活に引き戻されている」と指摘します。

 電話の後、歩美さんの自宅を訪ね、少し玄関先で話しました。物腰の柔らかな方でした。今月半ばから社協の勧めで自宅近くの公園で週2回1日15分の清掃ボランティアを始めたそうですが、「普通の生活への道のりが見えない」と言います。結局、私は何の力にもなれませんでした。

 歩美さんからは「同じ境遇の人がどうやって前向きに生きられるようになったのか。ヒントになる記事を書いてほしい」と頼まれました。

 解決は容易ではありません。どうかみなさんの体験談やお知恵をお貸しください。

今回の担当は

  増田弘輔 (ますだ・こうすけ) 2001年入社の「就職氷河期世代」。同世代のニートやひきこもりの人たちを取材してきた。

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 〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部「言わせて」係

 iwasete@yomiuri.com

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