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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

縦割り診療科の弊害…不調を総合的に解釈し診療するという視点

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縦割り診療科の弊害…不調を総合的に解釈し診療するという視点

 私の外来は、眼科専門病院の中で「神経眼科」「心療眼科」を 標榜(ひょうぼう) し、セカンドオピニオンを求める患者に対応しているので、眼球や視覚(見え方)に不具合はあり、かつ、一般眼科では診断が得られにくい症例が集まってきます。

 患者の半数は、眼球自体には原因となる病気がないか、あっても医学的に問題にするほどではないものの、日々の生活に大きな不都合をきたしている方々です。

 その訴えは、目が疲れる、ぼやける、ダブって見える、光がまぶしい、目が痛い、目を開けているのが苦しい――など様々です。この連載コラムでも幾度となく取り上げましたが、症状の多くは、視力、視野などの眼科で行われる視機能検査や画像検査では異常として検出されません。医師は、検査所見を手がかりに診断するトレーニングを受けているため、検査に表れないと「異常なし」というしかないのです。

 眼科医は、外界の視覚刺激が阻害なく入力しているかを主に調べているのに対し、患者はものを見ての生活に支障がないかという出力系に関心があるため、そこにギャップが生じやすいのです。

 患者が持つ問題が、軽微で、一過性で、自然回復すれば、「異常なし」とした医師の役割は終わります。でも、もし症状が頑強で、継続し、日常生活に影響すれば、患者は医療機関、各診療科目を転々とします。

 そうした方々によくみられる共通点は、症状が必ずしも視覚や目にとどまっていないことです。

 頭痛、頭が重い、抑うつ、不安感、記憶障害、不眠、耳鳴り、めまい、顎や口の中の異常感などは少なくありません。体の痛みや違和感、上下肢のしびれや動きにくさ、便秘や下痢などの消化器症状、婦人科の病気や泌尿器の問題などもあります

 これらの症状は、全く独立して別々に存在している場合と、実はメカニズムに共通点がありつつも、単に臨床表現の形や部位が異なっているだけのこともあるのです。

 ところが、眼科を受診した患者は、目以外のことは医師の方からわざわざ聞かない限り、訴えることはまずありません。そして、目のことは眼科、頭のことは脳内科や脳外科、抑うつや不安はメンタル系の診療科、腹痛は消化器内科などと、部位ごとに別々の科を受診しています。

 これは、日本に限ったことではありませんが、臨床医学では診療科目が臓器や機能ごとに独立に発達し、縦割りになっており、その弊害ともいえましょう。いろいろな部位に症状が出る病気を、もし科目ごとに別々の病名をつけてしまうと全体像が見えず、医学的解明は遅れてしまいます。

 総合診療科や総合内科という診療科目の出現は、それを補完しようとしたものとして大いに期待できると思いました。人々の生活の出力部分の不調を総合的に解釈して、縦割りではなく、 俯瞰(ふかん) 的に追究してくれる診療科を想像したのです。でも、視聴覚系、全身系、精神神経系を広く見渡して考えてもらえた事例に、残念ながらまだ出会ったことがありません。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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