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大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」

医療・健康・介護のコラム

コロナ陽性の50代男性、自宅で悪化したが入院拒否……理由は母の介護

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保健所だけでは対処できないケースが増加

 自宅療養者へのケアは、これまで保健所を中心に行ってきました。当初、新型コロナ感染症は「2類感染症」という指定を受けていました。2類感染症にかかった患者さんは、保健所の指示によって、速やかに感染症指定病院に入院する仕組みになっています。保健所の役割は、診断した医師から連絡を受けて、入院を見届けるまでですので、本来は数時間から長くても数日程度だったのです。

 しかし、感染拡大によって入院できずに自宅や宿泊施設での療養となる方が増えてきましたが、その方たちへのケアも、いつの間にか保健所が担うことになっていました。確かに保健所には、医師や保健師が常駐しています。しかし、医療機関ではないため、薬を直接処方することはできません。自宅療養中に熱が続いても、せきが止まらなくても、保健所の職員が薬を出すことはできなかったのです。そして、自宅療養の患者さんが増えていくことで、保健所の職員だけでは十分な健康観察ができなくなってきました。

保健所の手が及ばなくなり、かかりつけ医や訪問看護師もかかわる

 それまでは、保健所の職員が毎日自宅にいる患者さんに電話をかけて、容態の確認を行っていましたが、人手が足りなくなり、自治体によっては、AIを活用してスマホなどによる入力でそれを補ったり、電話も数日ごとになったりせざるを得なくなりました。自宅で亡くなる方が出てきたというニュースもその時期に一致しています。

 このままではいけないという強い危機感から、感染者の多い地域では、自宅療養者に対するケアを保健所中心から、かかりつけ医や訪問看護師へ移行する動きが始まりました。日々の健康観察を看護師が担い、状態が悪化している兆候があれば、地域のかかりつけ医がオンライン診療や往診で薬を処方したり、点滴や酸素投与を行ったり、緊急時は入院を指示することもできるようになりました。

 それまでは、もし自宅で苦しくなったとしても、保健所の職員は電話で「今、入院先を探していますので頑張って」という対応しかできなかったのです。まだまだ、往診できる医師や看護師の数は十分ではないものの、保健所だけが担っていたものをシェアしたことは、大きな前進だと言えます。

コロナへの対応には地域の多職種の力が必要

 感染が広がってくると、保健所が主体ではなく、かかりつけ医を始めとした、地域の多職種の力が必要となります。介護が必要な方もその地域で自分らしい生活を最期まで送れるように、医療・介護・福祉が一体となってケアしていく仕組みのことを「地域包括ケアシステム」と言います。まさに、この仕組みを最大限に活用して、自宅療養の方々を守っていくことが、今最も重要なことなのです。(大橋博樹、医師)

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大橋博樹(おおはし・ひろき)

多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。
1974年東京都中野区生まれ。獨協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。

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