認知症×発達障害 岡崎家のトリプルケア
もっと知りたい認知症
「私が喪主です」認知症の父、トンチンカンでも堂々と…さよなら母さん(下)
3月に一家3人がコロナ感染し、そのてんまつを番外編としてお届けしてきました。その間、中断していた「さよなら母さん」編に、3か月ぶりに戻ります。
6人だけの家族葬…施設の全面協力で実現
検案を終え、葬儀社の安置所に母さんが戻ってくると、葬儀の詳細を決めなければなりませんでした。葬儀社によれば、コロナ禍のため、現在は親族とごく親しい人だけで執り行う、いわゆる「家族葬」を選択する遺族が多いそうです。私もできることならば、参列者の対応に追われるよりも、父さんの介護をしながら家族全員で母さんを送り出せれば……と考えていました。
ただ、父さんが入所している老人ホームは、外出どころか家族との面会すら禁止です。ダメ元で相談してみると、「お父様も『参加する』と強い意志がありますし、こちらもできる限り対応しますから、ご家族で見送ってあげてください」との返答が。この施設側の気遣いとリスクのある中での決断には、感謝しかありませんでした。
こうして、私、父さん、夫のヒロさん、息子のたー君、ヒロさんの両親の6人だけの家族葬で母さんを送り出すことになりました。
母さんと涙の再会
久々に帰宅した父さんは、半年以上も外出ができない生活が続いたせいか足腰が弱り、実家から徒歩2、3分の距離の葬儀場にも車椅子で向かいました。車椅子姿の父さんを見た葬儀社の人が「喪主はどちらが…」と、「喪主」と書かれた名札を手に私たちに聞いてきます。すると「私が喪主です」と、父さんが名札を受け取りました。
その名札を胸に付けると、ひつぎに入った母さんに会いに行きました。認知症で感情のコントロールが難しくなっているはずなのに、取り乱すこともなく、静かに涙を流し、冷たくなった母さんの頬をさすっていました。
7歳児にお世話される喪主
そんな堂々とした振る舞いで私たちを驚かせたのもつかの間、控室で出たお茶に「オレはコーヒー牛乳が飲みたいんだ!」と、喪主らしからぬ態度でイライラが全開。見かねたヒロさんがミルク入りの缶コーヒーを手渡すと、ガブガブと飲み干し、ご満悦の様子。それを見たたー君が「じいじ、わがままー」と私の心の声を代弁して、父さんが口から垂らしたコーヒーをティッシュで拭き、マスクをかけてあげます。
たー君のけなげな姿にヒロさんの両親は驚いていました。もしも母さんが上から見ていたら、きっと「じいじと孫がアベコベなんだから!」とツッコミを入れていたに違いありません。
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