落語家 三遊亭円楽さん
一病息災
[落語家 三遊亭円楽さん]肺がん(番外編)病気との人生は「ひと月単位」「3か月単位」だから自粛はつらい…俺にもう少し走らせてくれ
日本テレビ系「笑点」でおなじみの落語家、三遊亭円楽さん(71)の肺がん体験について、「一病息災」(新聞記事をヨミドクターで再録)コーナーで紹介しましたが、さすが一流の 噺家 さんなので、病気の体験とはいえ、興味深い話題とニュアンスのある話しぶりは魅力的でした。記事からこぼれ落ちてしまったお話をボツにしてしまうのはもったいないので、ここで紹介します。(聞き手・渡辺勝敏、写真・宮崎真)
円楽さんの肺がんは、2018年夏に検診で見つかり、10月に手術を受けて、1週間で高座に復帰しました。ところが、翌19年7月には、脳とリンパ節への転移が見つかり、脳の腫瘍にはガンマナイフという放射線治療を受けました。その後、キイトルーダという最新の免疫療法薬の治療を毎月続けています。脳転移はなくなり、リンパ節の転移は縮小。治療直後から高座に復帰し、「笑点」でもゴルフ焼けした元気な姿を見せています。
毎年CT検査を受けていたが……たばこが原因じゃないタイプ
――もともと、健康管理は意識していましたか。
うちのおやじは58歳の時に肺がんで死んでる。おじいさんもそうだった。そういうこともあって、CT(コンピューター断層撮影)検査を毎年受けていたから、見つかったわけ。逆に「ついてるな」と思ったね。師匠の先代円楽が09年に肺がんで亡くなって、それをきっかけにたばこはやめました。ただ、肺がんにもタイプがあって、私のは腺がんで、これはたばことはあまり関係がないと聞いてます。
――肺がんと言えば、日本人で最も死亡数が多いがんです。「肺がん」と言われた時は衝撃を受けましたか。
「ああ、そうですか」という感じで、死ぬとは考えなかった。「先生、どうしたらいいでしょう」と聞くと、手術や放射線治療、化学療法と治療法はあるし、「根治を目指して手術をしましょう」って言ってくれたから、「お任せします」っていうことですよ。医療の進歩に助けられていますね。
そうは言ってもね……。年子の兄貴はすい臓がんで68歳の時に亡くなった。闘病中もゴルフをやったり、うちに来てマージャンをやったり、飲める時には飲んで遊んだりしてました。ある時、「あんちゃん、大丈夫かい?」って聞いたら、「お前、大丈夫なわけないよ。忘れるためにやってんだよ」って。その気持ち、今はすごくよくわかる。病気を忘れるためにも高座はいいですね。
落語はナマが一番。それをやらせてもらえないのはつらかった
――新型コロナの緊急事態宣言などで外出自粛になるのはつらいですね。
やっぱりこういう病気だから、ひと月単位、3か月単位、半年単位、1年単位で生きているんですよ。俺、時間がないかもしれないんだ。わかんないんだもん。だから好きなことをやらせてもらえないのが一番つらい。落語は、ナマが一番なんですよ。リモートなんかできないよ。ゴルフもそう。ちゃんと感染対策を取っていれば、大丈夫でしょ。フレイル予防にもなる。一時、「5人以上」の会食は避けてほしいとか言われてたけど、政治家もゴルフとマージャンはやりたいんだと思ったよ。(笑)
――新型コロナのせいで、高座が延期されたり、中止されたりでしたが、昨年の秋ぐらいからは、落語会を再開していますね。
コロナもあって、4日働いて3日休むぐらいのペースです。昨日は札幌、一昨日は山形という感じです。化学療法の治療の後は、食欲不振や吐き気が出ますから、ちょうどいいですよ。ちょっと動くと肺が詰まるように苦しくなるような時があるけど、深呼吸をすると戻ります。酸素をはかるパルスオキシメーターを通販で買って使っていますよ。楽屋でも、疲れたらちょっと失礼して横にならせてもらう。このままいくと、筋力が低下するフレイルに気をつけなきゃいけません。だから、ゴルフはいいですよ。ボール打つから歩くんですよ。健康のバロメーターはゴルフと高座。
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