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広がるがんゲノム医療…遺伝子変異を徹底検査 対応する分子標的薬探す

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がんゲノム医療…変異徹底検査 次の手探る

 がん細胞の遺伝子変異を調べて、効果が見込める薬を探す「がんゲノム医療」が広がりつつあります。標準治療で効果がなかった患者らが対象です。2019年、多数の遺伝子を一度に調べる「がん遺伝子パネル検査」が公的医療保険で認められました。ただ、実際に治療に入れるケースが少ないなど限界があります。(山崎光祥)

分子標的薬

 ヒトのゲノム(全遺伝情報)には2万~3万種類の遺伝子があり、喫煙や加齢などで変異します。細胞はそれを修復する機能も備えますが、がん化することもあります。がんを誘発する遺伝子が活性化したり、がん抑制遺伝子が働かなかったりして、がん細胞が無秩序に増殖し始めます。

 がん治療では、特定の遺伝子変異を狙い撃ちする「分子標的薬」を使うことがあります。臨床試験(治験)で効果が確かめられた部位のがんでは保険が適用されています。ただ、別のがんでも、原因の遺伝子変異が同じなら、効果を発揮することがあります。

 がんゲノム医療は、この考え方を応用しています。専門家がそろう中核拠点病院(4月時点で12施設)や拠点病院(同33施設)、それらと連携して治療にあたる連携病院(同180施設)で受けられます。

 保険で認められた「がん遺伝子パネル検査」は、カバーする遺伝子が114種類と324種類の二つの検査があります。手術時などに採取されたがん組織を検査会社に送ると、「次世代シーケンサー」と呼ばれる装置で解析。変異のある遺伝子や、対応する分子標的薬を探します。

8・1%

 解析結果は、中核拠点病院や拠点病院が設置する専門家委員会「エキスパートパネル」で検討されます。主治医は、患者が治療に耐えられるか、治験中の薬なら患者が参加条件を満たすかなどを確認します。最終的な治療方針は患者らと話し合って決めます。

 余命3~6か月とされた胆管がんの女性(70歳代)は、中核拠点病院の大阪大病院(大阪府吹田市)で、パネル検査を受けました。判明した遺伝子変異に対応する分子標的薬を2剤併用するとがんが縮小しました。薬は、胃がんや乳がんの治療薬でした。

 同大病院がんゲノム医療センター長の野々村 祝夫のりお さんは、「遺伝子変異や、それに対応した薬がなかったとしても、治療手段が尽きたわけではありません。エキスパートパネルでは少数の症例で効果があったと報告されている手法も検討します」と説明します。

 厚生労働省によると、19年9月~20年8月に検査を受けた186病院計7467人のうち、治療に結びついたのは607人(8・1%)でした。薬が見つかっても、国内未承認で入手できないなどの事情で治療を断念することもあります。

 検査から治療方法などが示されるまでの約2か月間に病状が悪化したり、治療でがんが縮小しても再び増大したりする患者もいます。胆管がんの女性も、治療開始から7か月後に病巣が増大。その半年後に亡くなりましたが、一定の延命効果はあったと言えます。

 がんゲノム医療は、現状ではまだ発展途上だと理解する必要があります。

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