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産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」

医療・健康・介護のコラム

デジタルが苦手な40歳代後半“ぶら下がり社員”がいよいよ追い込まれていく

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聞くだけでは、身につかない

私   :ほかの人に聞いたらできますか?

田所さん:う~ん。その時はできます。でも次に同じような操作が出てくると、途中まではできても、進むと「エラー」の表示が。ドキーンとして、体がフリーズしてしまいます。

私   :フリーズ。

田所さん:気を取り直して若手社員に聞きに行くのですが、彼の表情が「またか」と言っているようで、ひるんでしまいますね。メモを取ってなんとかやっていますが。

私   :それで。

田所さん:次々といろいろな操作があるのでわからなくなりますが、何度も聞きに行くのも申し訳ないし……。

私   :そうか。

田所さん:上司の課長に聞きに行って、教えてくれたことがあります。メモを取るのは恥ずかしいですね。

私   :恥ずかしい?

田所さん:プライドというか、ちょっと気が引けます。

私   :わかるよ。

周囲に聞くのも限界、どうすれば?

田所さん:こういうことは一度や二度で済むわけではないので、先日も同様なことが起こった時に、心が折れました。

私   :折れた。

田所さん:以前なら、わからないことがあっても、家に持ち帰って、勉強すればなんとかなるようなことだったんですが、ソフトの扱いとなると、調べ方もわからないというか……。

私   :時代が変わったからね。

田所さん:持って帰れませんし。本もなく、どうしようもない。

悩んでいるのは、あなただけではない

私   :田所さん、あなた一人だけではありません。40歳代後半の数人が私のところに同じような相談に来ていますよ。

田所さん:私だけではない……。(涙ぐんでいます)そうなんですか。

私   :産業看護の皆さんに聞くと、ほかにも相談に来ている人は10人以上と言っていますよ。

田所さん:わかります。デジタル機器に弱い人は多いはずですから。

営業時代、機器操作は部下任せ

私   :営業でもパソコンは使っていたでしょう。その時は、どうでしたか?

田所さん:使っていましたが、疲れました。

私   :それで。

田所さん:「これ、やっといてよ」と言って、部下に任せていたんですよ。

私   :自分ではやらなかった。

田所さん:そうです。営業は顧客のニーズ把握が大事だとか、経験を元にはっぱをかけていました。

私   :そうか。

田所さん:顧客から直接情報を取ってくるのが苦手な若者が多かったんですよ。

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natsume-prof

夏目誠(なつめ・まこと)

 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会元理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」ウェブ書籍「メンタル・キーワード療法~5分でできる簡易セラピー」。
夏目誠の公式ホームページ」「精神科医マコマコちゃんねる - YouTube

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1件 のコメント

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デジタルが苦手な社員は20~30代でも

BannedAid

“中高年のぶら下がり社員”は高度経済成長期、バブル期、ポストバブル期、いつの時代にも存在した。日本型企業は働き手を“コストの安い労働力”の観点か...

“中高年のぶら下がり社員”は高度経済成長期、バブル期、ポストバブル期、いつの時代にも存在した。日本型企業は働き手を“コストの安い労働力”の観点からしか見ないから、若年期はコストに見合うが、中高年になると見合わないと考える。コストの分だけパフォーマンスが上がるような訓練をするかといえば、新入社員研修以来、放ったらかし。それで“ぶら下がり”などと言うのは経営者側の怠慢、傲慢、無能以外の何物でもない。デジタル能力については、中高年だけの問題ではない。今の20代、30代は自宅にPCを所有しない者が多く、持っている(使える)のはスマホだけという人も多いのだ。では、経営者はそういう社員を今後どう活用していくのか。それを説かねば意味がない。人口減少社会において、これまでのように百年一日のごとく“雇っては放ったらかし”の放漫経営をすれば、“社会にぶら下がり経営者”と呼ばれるのがオチである。

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