新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
腸に炎症を繰り返す難病クローン病 親しい人にどう病気を伝えるか 「案ずるより産むがやすし」
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)
【今月のゲスト】
吉川祐一(よしかわ・ゆういち)さん
NPO法人IBDネットワーク理事。20歳を過ぎた学生時代にクローン病と診断される。病気を隠して就職したが、体調悪化により4年で退職。失意のUターンの後にカミングアウトして転職し、現在まで就労を継続している。長期入院で過ごした相部屋コミュニティーを原点に、患者会活動にかかわるようになった。最近は組織や疾患にとらわれない難病カフェの活動も楽しんでいる。
・NPO法人IBDネットワーク https://www.ibdnetwork.org/
IBDネットワークの吉川祐一さん(下)
きょうのカフェのカウンター席には、吉川祐一さんがお越しになり、カフェマスターの私とおしゃべりをしている。彼は、30年以上前、20歳代前半からクローン病と付き合っている。若い頃、病気を持ちながらの生活に苦労した思い出などを伺った。
「20歳代の頃は、病気を持った自分に自信がなかったんですよね」
懸命な努力をして周囲に病気を伏せていた。しかしそのせいで、様々な面に影響が及んだ。
恋愛面でも、体調が優れないとどうしても積極的になれない。病気のことも、どのタイミングで伝えるかは難しかったそうだ。しかし、病気のことをあまり気に留めない相手と出会うことができ、今では結婚し、2人のお子さんもいる。
「案ずるより産むがやすし」
難病になれば、当然いろいろなことが不安になる。でも、結構、周囲の方はそれを受け入れてくれ、理解してくれていると感じている。
今の職場に就職する際には、事前に病気のことを伝えた。おかげで、無理をすることもなく、症状も落ち着いている。バイクでのツーリングの趣味も再開できた。
自信を取り戻したことで、日々の楽しい生活も戻ってきたという。
5月19日の世界IBDデーに合わせた啓発も
天気の良い休日にカフェで私と話し込んでしまった。今日のこれからの予定を尋ねた。
「最近は、休みの日は、患者会の活動が忙しいんです。今日もこれから……」
彼は、NPO法人IBDネットワークという会の理事を務めている。
クローン病や潰瘍性大腸炎の患者会は全国に数多くある。そのうち33団体、2000人程度が加入し、各団体を緩くつなげている組織だ。このため、活動は全国各地に及ぶことになる。
会の活動の内容を伺った。
・5月19日の「世界IBDデー」に合わせて、啓発活動を行う
・総会を各地で開催し、各地の患者会の代表や会員が交流できる場を作る
・厚生労働省へ行き、助成などの充実を求める
・会報を発行し全国の活動を水平展開する
など、多岐にわたる
私が労をねぎらう言葉をかけると彼は言った。
「全国で同じ病気の方と出会えるのは、楽しくて、まるで旅行に行っているようなんですよ」
患者会活動を楽しんでいる!
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