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在宅医療がテーマの「いのちの停車場」が映画化…小説家・南杏子さん

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病に苦しむ人が「死」を望む時…あなたならどうしますか? 小説家・南杏子さんの問いかけ

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 在宅医療を巡る生と死のドラマを描いた映画「いのちの停車場」が、全国で公開されている。女優の吉永小百合さんが主人公の医師を演じ、金沢市内の小さな診療所を舞台に、末期がんや脊髄損傷による四肢まひ、脳出血など、ぎりぎりの状況で命に向き合う患者と家族、医師や看護師らが織りなす物語だ。原作者で現役医師の南杏子さんに、作品に込めた思いを聞いた。(ヨミドクター副編集長 飯田祐子)

雑誌編集者から医師に

病に苦しむ人が「死」を望む時…あなたならどうしますか? 小説家・南杏子さんの問いかけ

 ――以前は出版関係の仕事をしていたそうですね。30歳を過ぎて、医師を志したきっかけは?

 もともと人間の体に興味があって、人体図鑑をボロボロになるまで読むような子供だったんです。大好きな本を作る仕事がしたくて、日本女子大を出て編集者になったのですが、育児雑誌を担当して小児科医などに取材するうちに、改めて「お医者さんって、いい仕事だな」と。

 夫の留学に同行し、イギリスで暮らしていた時、現地で購読していた読売新聞で東海大医学部の学士入学を紹介する記事を見つけたんです。ちょうど帰国する予定でタイミングがよかったので、試験を受けてみたら合格しました。

 ――まさに巡り合わせですね。5年前から医療をテーマにした小説を手がけるようになり、今度は書き手として出版の世界に戻られたわけですが、一方で医師としても現場に立ち続けているとか。

 10年余り前から、高齢の患者の専門病院で内科医として勤務しています。患者さんは90歳を超えた方もたくさんいらっしゃいます。

 急性期の病院で、延命を第一に考えながら過ごしていた時代もあったのですが、その頃とは違う景色が見えるようになりました。「命の最初から最後まできちんと診るのが医療でしょう?」って、言われ続けているような気がしています。患者さんに教えていただく日々ですね。

祖父を介護した大学時代

 ――急性期医療に携わっていた時代があったというと、「いのちの停車場」の主人公の女性医師が、救急の専門医から訪問診療医に転身したのと重なります。

 作品に出てくるエピソードはフィクションですが、小説は現場で自分自身が感じたことや悩んだことなどがベースになっています。実話でなくても、登場人物の心の動きなどはリアリティーのあるものにしたい。こういう時代、環境、立場にある人が、どう感じるかをきちんと書かなければ、空想の世界になってしまうような気がして。主人公は自然と自分に近い人物を描く形になりました。

 ――そもそも高齢者医療の現場に入ったのは、どんな思いがあったのですか?

 高校を出て上京し、祖父母の家から大学に通いました。当時、祖父は寝たきりで介護を祖母が1人で担っていたんです。子供の頃、元気でよく笑って食べて歩いていた祖父を見ていたので、老老介護の姿に戸惑いました。1980年代のことで、まだ介護保険もなく、祖母が本当に大変そうでした。私も手伝ったのですが、水を一口飲ませるのにも「のどにつまらせてしまうかも」と恐る恐るで。身体と心の両面で、悩みや苦しみの大きい体験でした。同じような状況で頑張っている方を支える仕事ができたらいいな、という思いがありました。

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