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新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

腸に炎症を繰り返す難病クローン病 そうめん一本も通らないほど塞がり 腸を切除手術

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 ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

吉川祐一(よしかわ・ゆういち)さん

【今月のゲスト】
吉川祐一(よしかわ・ゆういち)さん

 NPO法人IBDネットワーク理事。20歳を過ぎた学生時代にクローン病と診断される。病気を隠して就職したが、体調悪化により4年で退職。失意のUターンの後にカミングアウトして転職し、現在まで就労を継続している。長期入院で過ごした相部屋コミュニティーを原点に、患者会活動にかかわるようになった。最近は組織や疾患にとらわれない難病カフェの活動も楽しんでいる。
 ・NPO法人IBDネットワーク https://www.ibdnetwork.org/

IBDネットワークの吉川祐一さん(上)

オンラインで対談する吉川さん(左)と筆者

オンラインで対談する吉川さん(左)と筆者

 カフェの駐車場に大きなバイクが入ってきた。鮮やかな黄色が目を引く。

この店を経営する私は、店の入り口まで迎えに出た。

 ヘルメットを取ると、吉川祐一さんだ。笑顔で私に声をかけてくれた。

 「ご無沙汰しています。ようやく来られましたよ」

 私より少し年上の50歳代後半だったと記憶している。カッコいい。カウンター席にご案内した。当店自慢のコーヒーを注文された。

 「腸に病気をお持ちだったと思いますが、コーヒーのような刺激物は大丈夫なのですか?」

 「クローン病というのですけど、最近は調子がいいし、大丈夫です。バイクでなければ、お酒でもいいんですけどね」

 見た目では、病気があるようには見えない。彼は大学生の時代に発症してから、胃腸炎や膵臓(すいぞう)炎などと診断され、クローン病と確定するのに1年半もかかった。

 その後、数回の手術を受けるなど、治療を続けてきている。20年前からは人工肛門をつけているが、自分は健康だと笑顔で言う。

潰瘍性大腸炎と合わせ炎症性腸疾患(IBD)

 クローン病は、小腸から肛門にかけての消化管が炎症を繰り返す病気だ。似た病気で、大腸にだけ炎症を繰り返すものは潰瘍性大腸炎と呼ばれており、両方を合わせて、英語の頭文字からIBD(炎症性腸疾患:Inflammatory Bowel Disease)と言われる。

 日本に併せて20万人余りはいると言われている。原因は分かっておらず、治療といっても根治させるのは難しい。

 炎症を抑える薬を日々飲むが、どうしても炎症は起きてしまうという。それが激しくなると、手術をして腸を切除することになるので、まずは炎症を起こさないような食生活が大切になる。

 基本は、低脂肪、低繊維質。一人ひとり、そしてその時の体調に合わせて食生活を工夫している。

 学生時代、友人たちが居酒屋などで普通に食事をしているなか、自分は豆腐しか食べられるものがなかったことが、今では印象深い思い出という。

 「炎症が激しくなると、腸が細く塞がっていくんですよ。私の場合は、一本のそうめんも通らないほど塞がると手術になると覚悟をするんです」

 経験したことのない私には実感がわかないが、彼は腸が細くなっていく感覚がわかるという。

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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