街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー
医療・健康・介護のコラム
空き缶やゴミとエレベーター移動も…スタジアムに多いバリアはどう解消? 五輪・パラに向けて
ヨミドクターをご覧のみなさま、サービス介助士インストラクターの冨樫正義です。オリンピック・パラリンピックの開幕まで100日を切りました。メイン会場の国立競技場をはじめ各競技場の整備も終わり、あとは開幕を待つだけでしょう。様々な方をおもてなしするための準備も進んでおり、国立競技場では車いす使用者向けの席もオリンピックでは500席、パラリンピックでは747席を用意していますし、トイレも男性用、女性用、車いす使用者用トイレ、男性女性共用トイレ、補助犬用トイレと多様です。
今までの「多機能トイレ」は様々な方が利用することを想定して、文字通り多機能でしたが、かえって利用者が集中して混雑してしまうことがありました。そのため今では、機能を細かく分散して設置することが推進され、それらを「バリアフリートイレ」と総称しています。国立競技場を訪れた際は、ぜひ多様なトイレにも注目してください。
このように設備が充実した一方で、運用面はいかがでしょうか。注意したい点をみていきましょう。
替えトイレットペーパーに手が届かない

替えトイレットペーパーの置かれた位置が高く、車いすからは届きにくい
もともと多機能トイレは車いす使用者が使用しやすいよう、十分なスペースを確保したことから進化してきました。しかしながら、車いす使用者が使いづらい足踏み式のゴミ箱が設置されているようなケースが、今でも見られます。また、取り替え用のトイレットペーパーや手指消毒用のアルコールが置いてある位置が高く、車いす使用者には届きにくいこともあります。誰もが届きやすい場所に設置してほしいものです。
使う側の問題もあります。便座を上げたり、可動式の手すりを動かしたり、簡易ベッドを使ったりした場合は、必ず元の位置に戻すようにしましょう。腕を上げるのが難しい人にとっては、便座を下げるのは大変ですし、簡易ベッドが広がって倒れていると、車いす使用者が移動しにくくなります。
点字ブロック上にイベント用テントが…

点字ブロックの上に仮設の建造物が設置されている
視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)の上に、イベント用テントなどが設置されているのを見かけることがあります。使う人のことを考え、点字ブロック上には物を置かないようにしましょう。
「並びにくい」にも事情は様々

整列しにくい人がいることも考慮したい
売店などの前に、ポールとベルトを使用したり、床にテープを貼ったりして並ぶ場所を示すケースがあります。車いす使用者にとっては、ポールとベルトを使うと横幅が狭くなるため、床にテープで示した方が並びやすくなります。しかし反対に、視覚障害者などには、触れるところがないと並びにくい人もいます。また、視覚障害者は、前の人が進んでも気づかないことがあります。このように、並ぶことへの困難は様々ですので、全ての人が同じように並ぶのではなく、実際には並ばなくても順番を決めておき、その人の順番が来たら注文を受けるなど、個別の対応もあるとよいでしょう。
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