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最高齢は88歳! eスポーツに打ち込む高齢者たち…高校生や外国人ともプレーし、認知機能に刺激

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 高齢者の間でコンピューターゲームを使った交流が広がっている。「シルバーeスポーツ」などと呼ばれ、ゲームを楽しむだけでなく、フレイル予防にも役立たせようというのが特徴だ。(栗原守)

最年長は88歳

eスポーツ認知機能に刺激

スマートフォンを使ってeスポーツを楽しむ高齢者ら(さいたま市で)

 「そうそう、そこだ。押せ!」

 プレーヤーを囲むように相撲ゲームのテレビ画面を見つめる高齢者が、夢中になって声援を送る。さいたま市浦和区で開かれた「さいたま市民シルバーeスポーツ協会」の集い。コロナ禍で集まる回数は減っているものの、活動開始から3年近くで会員は約40人になった。最高齢は88歳だという。

 同協会の森田孝会長(86)は「ゲームで高校生や在留外国人らと交流することもある。新しいことに挑戦すると、老化も進まない」と笑顔で話す。

 昨年7月には、60歳以上限定のeスポーツ施設も登場した。神戸市中央区の「ISR e―Sports」だ。平日は、通信パズルゲームなどを楽しむ高齢者の姿が絶えない。

 週1回のペースで通う竹田ゆり子さん(70)は「これまでゲームの世界には縁がなかったが、定年後の今は、夢中になれるこの時間を楽しんでいる」という。ゲーム利用後はコーヒータイムがあり、来場者同士でおしゃべりすることもできる。

「指導士」育成

eスポーツ認知機能に刺激

60歳以上限定のeスポーツ施設でゲームを楽しむ利用者ら(神戸市のISR e―Sportsで)

 eスポーツは、コンピューターゲームやビデオゲームで対戦し、点数やタイムを争う競技のこと。ゲームは依存症に陥る危険性をはじめ、マイナス面が強調されがちだが、高齢者の健康という点では見直されている。ゲーム画面の動きに合わせて指を動かすことが、認知機能を改善させるというのだ。慶応大学環境情報学部の加藤貴昭教授らは、ゲームによって、高齢者の認知機能や、画面の動作を予測する機能が向上するという研究結果を明らかにしている。

 こうしたeスポーツの効用を広めるため、民間団体の日本アクティビティ協会は「健康ゲーム指導士」の育成に乗り出した。遊び方を分かりやすく説明したり、ゲームソフトを簡単に設定したりする方法を習得してもらい、高齢者がゲームを楽しむ環境づくりを支援する独自の資格。介護事業所の職員や公務員らが養成講座を受講し、既に500人超の指導士が誕生している。

 同協会の川崎陽一理事長は「ゲームは健康的に交流ができるのが強み。社会全体がデジタル化していく中で、指導士に多くの関心が寄せられている」と話す。

高校生とプレー 全国大会

 自治体でも、eスポーツを活用しようという動きが出ている。

 鳥取県では、世代間の相互理解を深めようと、県立高校の生徒と高齢者がゲームで交流するプロジェクトがスタート。富山県は民間企業と連携して、今年度中にシルバーeスポーツの全国大会の開催を計画している。神戸市もeスポーツによる健康増進効果を調べる実証事業を実施中だ。

 コロナ禍で外出の機会が少なくなりがちな高齢者にとって、eスポーツは社会的なつながりを維持できるというメリットがある。一方で、ICT(情報通信技術)機器を使いこなせない人も多い。

 高齢化社会におけるICTの活用に取り組む富山県立大学の鳥山朋二教授(情報システム工学)は、「通信に不慣れな高齢者が、自宅で機器を設定するのは難しい。今後はこうした高齢者を支援し、遠隔地の相手と一体感や盛り上がりを楽しめるような環境づくりが必要だ」と指摘している。

  ◆フレイル =「健康」と「要介護」の間にある心身の調子が崩れた状態。「虚弱」を意味する英語「frailty(フレイルティ)」が語源で、65歳以上の1割が該当し、75歳以上で大きく増えるとされる。

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