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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

首や肩にうずくような鈍い痛み「筋・筋膜性疼痛症候群」 悪い姿勢とストレスも原因に

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姿勢の矯正、ストレスのコントロールも重要

 トリガーポイントの多くが東洋医学的な経穴(ツボ)と一致する。したがって、本症候群の一部を経穴の名前に当てはめて呼ぶことがある。「緊張型頭痛」のうち目の奥の痛みを伴うものは「 天柱(てんちゅう) 症候群」、「肩こり」があって“ 肩井(けんせい) ”(首の後ろから肩甲骨内側へと広範囲に張っている僧帽筋にある)に強い圧痛点がある場合には「肩井症候群」、肩甲骨内側上縁にトリガーポイントが存在する「肩甲 肋骨(ろっこつ) 症候群」は「 肩外兪(けんがいゆ) 症候群」、さらに下がって「病 膏肓(こうこう) に入る」の“膏肓”にトリガーポイントがあれば「膏肓症候群」である。

 私の施設では、トリガーポイントへの局所注射を治療の第1選択としている。局所麻酔薬(ネオビタカイン)と副腎皮質ステロイド薬を注入することで、痛みの悪循環を 遮断(しゃだん) し、血流を改善して、炎症物質を一掃するのである。加えて筋肉の弛緩作用を持つエチゾラム(本来は安定剤として用いられている)や、肩こりには 葛根湯(かっこんとう) 、強い筋肉のけいれんを伴うものでは 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) などの漢方薬を処方する。その他、 鍼灸(しんきゅう) 治療、経皮的電気刺激療法(肩こりに用いられる家庭用の低周波治療器もこれに含まれる)も併用している。なお、食中毒の原因となるボツリヌス菌の毒素を用いた局所注射(「顔面けいれん」「 痙性斜頸(けいせいしゃけい) 」などの治療に用いられている)の有効性が報告されているが、一般的な使用には至っていない。適度な(あくまでも適度な、である)マッサージも、血流の滞りを改善する点からは有効である。

 生活様式の変化によって、現代人では筋肉の 脆弱(ぜいじゃく) 化が進行していることと相まって、本症候群による痛みが増加している。姿勢異常(いわゆる猫背など)が大きなウェートを占め、“過剰負荷症候群”のひとつとして捉えられていることからも、姿勢の矯正、生活様式の改善、さらにはストレスのコントロールといった日常生活での注意も重要となる。(森本昌宏)

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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