中川恵一「がんの話をしよう」
医療・健康・介護のコラム
「病院嫌い」の養老孟司先生が入院したわけ
アシナガバチに刺されて倒れた経験 コロナのワクチン接種は?
昨年から今年にかけて制作された本書は、コロナに関する記述も豊富です。その中で先生はワクチンについて、「すぐにでも打ってみたい」と書いていました。医者嫌いの養老先生といえども科学者の一人です。最新のワクチン接種を自ら経験することに対しては、興味があるようです。
ワクチンに関しては後日談があり、ご自身のワクチン接種にあたって、メールでいくつか質問されました。その一つが、「アシナガバチに刺されて倒れたことがあるが、接種の際、そのことを告げる必要があるか?」というものでした。
養老先生のメールには、以下のようにありました。
「私はアシナガバチのアレルギーがあります。一度ラオスで刺されて、4時間ほど倒れていたことがあります。おそらくアナフィラキシーに近いものだと思いましたが、症状はまず景色がきれいになり、コントラストが強くなりました。それが進んで景色が白黒写真のネガみたいになり、吐き気が強くて寝たままで何もできず、4時間ほどで回復しました。その間に視覚の異常?があって、見るものが自分の都合のいいものに見え、電灯の傘(かさ)の模様が虫の集団に見えました」
私は接種当日の問診票にある「重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか」の項目には「はい」をチェックするようにアドバイスしました。ハチに刺されて倒れた原因がアナフィラキシーだったのかどうかはわかりませんが、新型コロナのワクチン接種は、特に強い副反応もなく無事に終えられたようです。
本書には、私とも養老先生とも親しい漫画家のヤマザキマリさんとの鼎談(ていだん)も収録されています。コロナ禍でイタリアの家族と離れて暮らさざるをえなくなったヤマザキさんは、日本とは異なるイタリアの医療事情について教えてくれました。これに対し、私は日本の臨床医という立場から、養老先生は医療のシステム批判という立場から、3人で現代医療が抱える問題を語り合っています。コロナ禍で不要不急の外出は避けろといわれる中、タイムリーな話題が満載の本書をじっくり味わってみてはいかがでしょうか。(中川恵一 放射線科医)
2 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。