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生後2か月で39度の熱、薬も効かず…抵抗力がない「免疫不全症」は命に関わる場合も 新生児検査に導入目指す

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免疫不全症命に関わる場合も…新生児検査に導入目指す

 生まれつき抵抗力がなく、様々な感染症にかかりやすい病気を免疫不全症(PID)といいます。診断が難しく、命に関わる場合もあります。早期に発見することを目指し、少量の血液で病気の有無を調べる新生児検査の項目に導入しようと、研究が進められています。(野村昌玄)

診断難しく

 免疫不全症は400種類以上ある病気の総称で、1000~1万人に1人の割合で発症するといわれています。身の回りにありふれ、健康な人はさほど心配する必要がない病原体への抵抗力もなく、様々な感染症にかかりやすくなります。

 なかでも重症化して死亡するリスクが高いとされるのが、免疫に関わるリンパ球の一種のT細胞がない重症複合免疫不全症(SCID)と、B細胞がないB細胞欠損症(BCD)です。予防接種を受けると、本来、ワクチンで防ぐはずの感染症にかかり、胃腸炎になって下痢や血便の症状が出たり、骨髄炎や脳炎を発症したりする恐れがあります。

 SCIDは、骨髄移植やさい帯血移植といった治療を受けることで、根治が期待できます。BCDは、体内に侵入した病原体を攻撃する抗体を補うため、免疫グロブリンを定期的に注射し、感染症の発症を防ぎます。ただ、これらの病気に詳しい医師でなければ診断が難しいのが現状です。

 防衛医科大などの研究チームは2009~11年、血液中の遺伝子の断片からT細胞やB細胞の有無を調べる手法で、SCIDとBCDを診断できると海外の医学誌に報告しました。

早期発見で治療へ

 国内では、生後5日前後の赤ちゃんに、足のかかとから血液を採取して 濾紙ろし に付着させ、約20種類の病気の有無を調べる新生児検査が行われています。現在は、SCIDとBCDは検査項目に入っていません。

 愛知や熊本、埼玉県などの病院では、同大などの研究チームの報告をもとに17年以降、新生児検査で任意にSCIDやBCDの有無を調べる取り組みをしています。国内の15医療機関で作る日本医療研究開発機構(AMED)の研究班も19~21年度に、新生児検査の項目にSCIDとBCDを加えることを目指し、20万人以上の検査データを解析する計画を進めています。

 日本小児科学会など関連3学会は、これらの病気を新生児検査で調べられるよう昨年12月、厚生労働省に要望書を提出しました。

 茨城県土浦市の男児(2)は生後2か月だった19年3月、39度の熱を出して近くの病院に入院しました。肺炎が見つかり抗菌薬を投与しましたが、1週間たっても回復しません。

 その後、通常の免疫があればかかりにくい「ニューモシスチス肺炎」と分かり、転院した東京医科歯科大病院でSCIDと診断されました。同年5月、さい帯血移植を受け、外出もできるようになりました。現在は数か月に1回通院し、経過をみています。母親(34)は「薬も効かず、病名が分かるまでは精神的に苦しかった」と振り返ります。

 AMEDの研究班長で、男児を診療する東京医科歯科大病院小児科医師の今井耕輔さんは、「診断が難しい病気だからこそ、新生児検査で速やかに見つけ、治療につなげることが重要です」と話しています。

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