文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

風呂に料理に…意外に役立つ「身近な野草」 有毒、アレルギーには注意

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、行楽を控える日が続いている。身近な野草に目を向ければ、見慣れた風景も生活を豊かにしてくれそうだ。(堀美緒)

風呂に、料理に…健康増進身近な野草意外に有能

野草の活用法を説明する山下さん(右)。「暮らしの中に野草を上手に取り入れてほしい」=貞末ヒトミ撮影

 熊本県高森町の道路沿いで4月下旬、野草の観察会が開かれた。講師は「ハーブ王子」の愛称で活動する北九州市の野草研究家、山下智道さん(31)。道端のピンクの花を指し、「若い葉はゆでてあえ物にするとおいしいですよ」と約10人の参加者に解説した。キク科のハルジオンで、ありふれた雑草だが、花も食べられ、風呂に入れると保湿や冷え改善などにいいという。

id=20210516-027-OYTEI50006,rev=2,headline=false,link=true,float=right,lineFeed=true

ハルジオン

 この日観察した植物は約150種。葉の中央に小さな花がついたハナイカダは、さっとゆでてごまあえに。ヤブカンゾウは葉をバターいためにするとおいしく、花も食べられる。ヤブニンジンの種はスパイスとして使える。参加した同県南阿蘇村の自営業甲斐佳子さん(41)は「日頃歩くような道も野草の知識があるとワクワクしますね」と笑顔を見せた。

id=20210516-027-OYTEI50007,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

ハナイカダ

 山下さんは野草の本を3冊出版し、全国で観察会や料理教室を開いている。「昔はドクダミ茶やヨモギ団子、スギナ風呂など、野草を生活に取り入れていた。身近な植物の魅力を広めたい」と力を込める。

id=20210516-027-OYTEI50005,rev=2,headline=false,link=true,float=right,lineFeed=true

ヤブカンゾウ

 健康志向の高まりやアウトドア人気などから、野草は注目されている。日本園芸協会は、野草の活用法に詳しい「薬草コーディネーター」の認定講座を2006年に開設。食べられる野草を紹介する本や、スマートフォンで野草の写真を撮ると名前がわかるアプリも登場した。薬用植物に詳しい正山征洋・九州大名誉教授によると、西洋医学の推進により衰退していた「漢方」が、近年見直されていることも背景にあるという。「漢方薬を使う人が増えたことで、身近な植物が病気の治療や予防、健康維持などに有用だと知られるようになった」と話す。

id=20210516-027-OYTEI50004,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

ヤブニンジン

 地域活性化や食育に活用する動きもあり、鹿児島県伊佐市の曽木の滝公園内には19年、近隣に豊富な野草や薬草について学べる「野草薬草館」が開館した。運営会社の内川隆司社長は「野草の料理や工作のワークショップには、県外からの申し込みもある。コロナもあって、健康や自然への関心が高まっているのでは」と説明する。

 大分県玖珠町の民泊施設「大分県さかもと村」では、農作業体験のほか、村長の坂本健一さん(70)の指導で野草を採って食べることができ、修学旅行の体験メニューに人気という。坂本さんは「生命力がある野草に触れることは、食について考えるきっかけになる」と話す。

有毒なものなど注意を

  野草の中には、有毒なものや、アレルギーの原因になるものもある。見分けがつかないものは、決して採取しないようにしたい。

id=20210516-027-OYTEI50002,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

トリカブトの一種「オクトリカブト」(厚生労働省ホームページより)

 厚生労働省によれば、昨年までの10年間で、793人が有毒植物で食中毒になり、うち14人が死亡した。トリカブトは、誤って食べると呼吸困難などを引き起こす毒草で、葉はヨモギやニリンソウに似ている。ほかに、スイセンをニラと、イヌサフランをギョウジャニンニクと間違えるケースが多い。

 キク科、イネ科などの植物の汁や花粉でアレルギー症状が起こる場合もある。

 採取する場所にも注意が必要だ。車の排ガスが多い道路脇や、除草剤がまかれた場所は避ける。私有地に入らないことはもちろん、大量に採取するのも控えよう。

薬草茶 気分に合わせ

 

id=20210516-027-OYTEI50003,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

山下薬草店で販売している薬草茶

 野草を使ったお茶などを手軽に購入することもできる。

 鹿児島県と宮崎県にまたがる霧島連山は数百種の薬草が自生することで知られる。同県高原町の山下薬草店は、麓で採った約30種類の薬草でヨモギ茶やドクダミ茶、ブレンド茶などを製造し、店舗やインターネットで販売。店主の山下洋一さんは「気分や好みに合わせた薬草茶が選べます」と話す。

 熊本県阿蘇市の阿蘇薬草園は、阿蘇地域の自然で育った薬草を採取。お茶やせっけん、菓子などを製造し、店舗やオンラインストアで販売している。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事