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変異型猛威 各地でコロナ病床確保へ…準備に数週間 対応急ぐ

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 感染力が強い変異型の新型コロナウイルスが猛威を振るう関西圏で医療が危機的状況になっていることから、各地で警戒感が強まっている。自治体や医療機関は、病床 逼迫ひっぱく に陥った今冬の第3波の反省を踏まえ、医療提供体制の立て直しを急いでいる。(西田真奈美、大沢奈穂)

[安心の設計]コロナ病床確保 各地で急ぐ…第3波の反省踏まえ

新型コロナの中等症患者を受け入れる病室に入る準備をする看護師(3月17日撮影、済生会横浜市東部病院提供)

 「第3波では、当初の計画通りにコロナ病床を増やせなかった。見通しが甘かった反省から病床確保計画を抜本的に見直した」

 神奈川県の医療危機対策統括官を務める阿南英明医師は、こう語る。

 病院のコロナ対応が遅れた要因の一つに、看護師らスタッフ確保の目詰まりがあった。コロナ患者を受け入れる際は、入念な感染防護対策が必要で、通常よりも人手や手間がかかる。病床だけでなく、スタッフも同時に確保しなければならない。

 済生会横浜市東部病院は、第3波ピーク時、コロナ用に26床を確保し、医師も看護師も休日返上で乗り切った。ただ、「それ以上ピークが長引いたり、患者が増えたりしたら対応しきれなかっただろう」と三角隆彦院長は語る。この経験を踏まえ、看護師らの大規模な配置転換まで考え、感染拡大の段階ごとに勤務表を作り直した。

 こうした各医療機関の見直しを基に、神奈川県のコロナ病床確保計画は、5段階の感染状況に応じ、最大で1790床を確保する形に変化した。

◆転換に数週間

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コロナ病床を増やすために仮設病棟を作る動きもある。埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)にも3月末、平屋建て775平方メートルのプレハブ病棟が開設した

コロナ病床確保 各地で急ぐ…第3波の反省踏まえ

 では、綿密な計画があれば、感染拡大に応じ、病院はすぐ病床を増やすことができるのか――。現実はそう簡単ではない。

 元々空き病床が少ない病院の場合、入院中の患者が退院しないと、コロナ用に病床を確保することはできない。入院患者が退院し、コロナ用の空き病床を一定数確保するまで、2~3週間かかることも想定される。

 神奈川県内のコロナ病床の使用率は4月21日時点で21%とまだ余裕はあったが、県は26日、病床確保の段階を、第3波相当を想定した上から2番目(計1475床)に引き上げるよう、県内の医療機関に要請した。

 病院側の準備に数週間かかることを見越し、「変異型の影響などで感染が急速に拡大する恐れを考えると、この段階で増床のスイッチを入れないと間に合わなくなる」と阿南医師が考え、早めの要請を進言した。

転院調整 なお課題

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 感染拡大に対応するには、病院の役割分担と連携が欠かせない。

 第3波では、コロナが改善した後もリハビリが必要な高齢患者らの入院が長引き、病床逼迫に拍車をかけた。こうした教訓を踏まえ、東京都はコロナ病床を最大で6044床確保する計画を立てただけでなく、回復患者を受け入れる後方支援病床も約1000床確保した。

 各病院の空き病床数などが見られる転院支援システムも運用する。病院が転院させたい回復患者の情報を入力し、空き病床がある転院先を検索。サイト上で転院を申し入れ、返答を待つ仕組みだ。

 だが、病院関係者からは「情報が古いうえ、(申し入れても)連絡がなかなかつかない」との不満の声も聞かれる。

 回復患者の受け入れに取り組む日本慢性期医療協会の武久洋三会長は「感染者が多い地域では、都道府県が転院調整の役割を十分に果たせていないケースがある。転院依頼の大半は、急性期病院から直接連絡がくる」と指摘する。

◆通常医療制限も

 一方、コロナ病床を大幅に増やせば、通常医療が圧迫されるという問題も生じる。

 東大病院の瀬戸泰之病院長は「コロナ診療における大学病院の役割は、高度医療が必要な重症患者への対応だ。各大学がそのために増床の努力をしている。だが、そうすれば、その分他の手術などは制限せざるを得なくなる。厳しい実態を多くの人たちに理解してもらう必要がある」と話す。

6都府県が増床へ

 4月末時点で「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」の対象となっていた11都府県のうち、変異型の拡大を踏まえ、6都府県が確保病床をさらに増やす方針であることが、読売新聞の調査でわかった。ただし、具体的な目標病床数を示したのは、3都県にとどまった。

 調査は4月末、緊急事態宣言の対象4都府県(東京、大阪、京都、兵庫)と「まん延防止等重点措置」の対象7県(宮城、埼玉、千葉、神奈川、愛知、愛媛、沖縄)に実施。

 新たな目標病床数を回答したのは、東京、埼玉、兵庫。東京は6044床、埼玉は1619床、兵庫は1200床を目標とした。同28日時点の確保病床と比べ、東京は450床、埼玉は108床、兵庫は265床を積み増す形だ。

 「増床の方向で検討中」としたのは、京都、愛知、沖縄。いずれも具体的な目標病床数は示さなかった。

 「現状維持」は千葉、神奈川、愛媛の3県。いずれの県も、すでに増床を重ねていることを理由とした。

 大阪は「患者急増で計画の議論ができていない」としている。

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