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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

医療・健康・介護のコラム

スポーツで首を強打。後遺症のリスクを減らすため、周囲が心がける対処法とは

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 緊急事態宣言下でのゴールデンウィークが明けました。外で体を動かしたくなる季節になったというのに、なかなかスポーツに打ち込みづらい環境です。プロゴルフで松山英樹選手のマスターズ・トーナメント制覇、水泳界からは池江瑠花子選手の日本選手権での活躍など、スポーツの明るいニュースもありましたが、先行きの見えない新型コロナウイルス感染症の状況では、なかなか心が晴れ切ることがありません。

 誰もが元気にスポーツができる日を心待ちにしながら、今回は、 頚椎(けいつい) をけがした場合(頚椎のけがを疑う場合)、後遺症のリスクを抑えながら運び出す際の注意点についてお話しします。

 Kさんは、大学でラグビーを行っています。試合中にタックルにいったとき、首から頭にかけて強い衝撃を受け、起き上がれない状態になりました。意識ははっきりしていますが、両手足がしびれて動かない様子です。プレーは中断され、メディカルスタッフが駆け寄ってきました。

首のけがでは四肢に麻痺症状が出ることがある

 頚椎と頚髄、これは似た言葉ですが異なります。頚椎は首にある骨を指します。一方、頚髄とは脳から続く中枢神経の首を通る部分を指します。頚髄が損傷を受けると、四肢に 麻痺(まひ) 症状が出現し、後遺症として残ることが少なくありません。麻痺の部位や重症度は、損傷した部位やその程度により異なります。多くの場合、頚椎が骨折や脱臼などをすることで、頚髄も損傷してしまいます。

スポーツで首を強打。後遺症のリスクを減らすため、周囲が心がける対処法とは

 ラグビー、アメリカンフットボール、柔道、相撲などのコンタクトスポーツでは、頚椎にけがをしやすくなります。そのほか、体操競技やスノーボードのジャンプなど、高所から転落の危険があるスポーツでも発生します。

予防に加え、周囲の適切な対処が必要に

 まずは、けがの予防が大切です。コンタクトスポーツでは、首回りの筋力強化、タックルしたり、相手選手にぶつかったりするときの正確な姿勢、倒れた際の受け身の習得などは、けがを回避するための基本です。高いジャンプを要する競技では、空中での自分のポジションの正確な把握に加え、自分の技量に見合っていない無理な技には挑戦しないことなども大切です。

 浅いプールへの飛び込みにも危険が伴うため、近年、学校の水泳の授業では、飛び込みをしないことになっています。

 万が一、首などを強打して、けがの可能性がある場合、現場で損傷部の状態を悪化させないよう、頚椎を適切に保護して、医療機関に搬送する必要があります。イラストはMILS(Manual in  Line  Stabilization;ミルズ)と呼ばれる、頚部が動かないよう頭側から保持する方法です。一人がこの体勢を取って安定させて、別の人が首の周辺を固定させる「頚椎カラー」を装着します。

スポーツで首を強打。後遺症のリスクを減らすため、周囲が心がける対処法とは

 担架に乗せる際にも、首の位置を動かさないように気をつけて、頚椎の位置を保持します。イラストのように、患者の体を横向きにして乗せるログロール法、体全体を浮かせて足から担架を入れるリフト&スライド法などを活用することで、可能な限り、負担がかからないように気を付けます。

スポーツで首を強打。後遺症のリスクを減らすため、周囲が心がける対処法とは

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。

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