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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

自転車のハンドルで強打し肝臓損傷した11歳女児 転倒の原因は「傘」

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 動くものに乗っていて転倒すると、けがの重症度が高くなります。今回は、学童編です。

自転車のハンドルで強打し肝臓損傷した11歳女児 転倒の原因は「傘」

イラスト:高橋まや

ポールにぶつかって肝臓破裂

 学童や生徒の自転車事故は多発しています。転倒すると大けがを負う場合があります。

 事例1:7歳女児。2018年7月17日午後4時少し前、自転車に乗っていて坂道を下り、車止めのポールにぶつかって転倒した。起き上がれず、30分くらい現場に横たわっていた。通りかかった軽自動車のおじいさんに家まで送ってもらい、5時半に母親に付き添われて私のクリニックに来院した。とても苦しそうな顔で、左上腹部に直径6~7センチの内出血斑、あちこちにすり傷があった。内臓障害を疑い、救急車で大学病院の外傷センターに搬送した。肝臓が破裂しており、1週間入院した。

  事例2 :11歳女児。春休み中の午前8時50分頃、塾へ行くために自転車(ママチャリ)に乗って歩道を走っていた。ハンドルに掛けていた傘が前輪のスポークに引っかかって転倒し、左前腕を打撲、右腹部をハンドルの先端で強打した。腹痛が持続するため医療機関を受診した。腹部CT(コンピューター断層撮影)で肝臓の損傷が見つかり、19日間入院した。

 学童の交通事故は、低学年では歩行している時の事故が多いのですが、高学年になると自転車の事故が多くなります。自転車に乗る場合は、ブレーキの利き具合、タイヤの空気圧、サドルの高さの調整などの整備のほか、ヘルメットの着用など基本的な準備をすることが大切です。

 自転車の転倒による事故では、自転車のハンドルバーによる内臓の損傷がよく知られています。自動車事故のような非常に大きなエネルギーではなく、比較的小さなエネルギーであっても、自転車のハンドルバーやパイプ椅子の脚にぶつかるといった「一点に集中する」場合や、シーソーの角、ブロック塀の角など腹部に対して線状に外力が加わる場合に内臓損傷が起こることがあります。このようなけがでは、外力と脊椎に臓器が挟まれて臓器の損傷が起こると考えられています。肝臓や 脾臓(ひぞう) が損傷すると大量に出血し、 膵臓(すいぞう) の損傷では膵液の漏出によって 腹腔(ふくくう) 内の組織障害が起こります。

 自転車のハンドルのバーエンドの形状と、腹部外傷のデータを収集し、どのような機序で腹部外傷が起こったのかを検討し、傷害を起こしにくい形状にする必要があります。バーエンド部分の面積を広くする、金属部分が露出しない構造にする、バーエンド部は軟らかい素材にするなど、形状や硬さの工夫をすれば、受傷時の衝撃を緩和することができると思います。

 自転車が転倒しやすい状況としては、自転車のハンドルに傘を掛けていて、右・左折した時に傘が前輪タイヤに絡んで転倒する、走行時の振動で前かごに入れた荷物のひもが垂れ下がって前輪に巻きついて転倒するなどがあります。坂道でブレーキが利かず、何かに衝突して転倒することもあります。自転車のハンドルには物を掛けない、あるいは物が掛からない・掛けにくいハンドルにする、前輪にカバーをして物が挟み込まれない構造にすることもできると思います。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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