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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

医療・健康・介護のコラム

のどの不調を治したら、頑固な肩こりが消えた! 

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慢性上咽頭炎を確認

  さて、Aさんの鼻の奥、上咽頭を咽頭内視鏡で確認すると、やはり慢性上咽頭炎を引き起こしていました。上咽頭はレントゲンやCTでははっきりと写らない軟部組織で、風邪の際に「あーん」として見せてもらう方法では、喉ちんこに隠れて見えない場所です。ところが、ここがウイルスの増殖地となります。当初の新型コロナウイルスのPCR検査で鼻の奥に綿棒を突っ込んで検体を採取していたところ、そこが上咽頭です。

のどの症状が消えると肩こりも解消、マッサージ不要に

 Aさんに、治療と併せて「命の上流」のセルフケアとして、あいうべ体操と就寝時の口テープを勧めたところ、1か月後にはのどのヒリヒリ感、詰まり感が消失しました。3か月後、最後となった5回目の治療の時に、Aさんから思いがけない言葉を言われました。

 「これまで、ひどい肩こりでマッサージや整骨院に行っていましたが、もうまったく行かなくなったんですよ」

 そう、問診票にも書いてあった頑固な肩こりはAさんの長年の悩みで、定期的にマッサージなどしてもらっていたそうです。それがまったく不要になったというのです。肩こり、首こりの原因は、姿勢の悪さや動かさないことによる血流障害だと思っていませんか。実は、上流医療の観点からは別の原因が見えてきます。

神経の走行に答えがあった

 Aさんの肩こりは、局所のマッサージもすることなく、なぜ改善されたのでしょうか。そして、のどの不調とどんな関係があるのでしょうか。これには脳神経の解剖学的な問題に答えがありました。

 咽頭周辺は10番目の脳神経である迷走神経が分布しています。一方、肩こりを起こす筋肉の僧帽筋には副神経が分布しています(痛みなどの知覚は 頚髄(けいずい) 神経)。この副神経は11番目の脳神経で、英語ではアクセサリー神経と言い、迷走神経の付属物と考えられていました。脳の中では迷走神経と同じく、頚静脈孔から脳外へ出るまで併走しているのです。上咽頭炎が起こり、迷走神経の機能異常から副神経も影響を受け、僧帽筋の動きが悪くなり、肩こりを引き起こしているのではと思われます。

 頑固な首こり、肩こりに悩んでいる人は、口呼吸になっていないか、アレルギー性鼻炎や 副鼻腔(ふくびくう) 炎など鼻の病気がないか、常にのどに何かへばりついている感じ、ドロドロした鼻水が流れ落ちる後鼻漏という症状がないか、などが改善のヒントになるかもしれません。一言で肩こりと言っても、とても奥が深いのですね。(今井一彰 みらいクリニック院長・内科医)

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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