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鶴若麻理「看護師のノートから~倫理の扉をひらく」

医療・健康・介護のコラム

酸素の管が外れパニックに陥ったコロナ患者がナースコール 防護具に時間がかかって…集中治療室の看護師

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 今回も新型コロナウイルス感染症の患者さんと向き合う、集中治療室で働く看護師数名にヒアリングしました。看護師の日々の実践とその原動力となるものについて考えます。

モニター上の酸素の値が下がって…

酸素の管が外れパニックに陥ったコロナ患者がナースコール 防護具に時間がかかって焦り…集中治療室の看護師たち

 報道を通してもよく目にする個人防護具。それを身にまとってケアにあたるのは、最初は大変だったそうですが、今ではだいぶ日常的になってきたと言います。しかし、防護具の着脱に時間がかかり、いつも通りのスピードでベッドサイドに行くことができないもどかしさがあると話をしてくれました。

 通常、看護師は患者さんからのナースコールがあったら、できるだけ早く対応します。ナースコールは患者さんからの呼び出しです。ナースコールを受けてから防護具を着ると、実際には3分程度はかかるそうです。

 コロナウイルスに感染したある患者さんは、医療用麻薬を使っており、短期記憶を保つことが難しい状況でした。夜間は看護師の数も少なく、コロナウイルス 罹患(りかん) で入院中の別の患者さんに対応している時、この患者さんからナースコールがありました。他のスタッフも別の患者さんに対応しており、呼んでいる患者さんのもとになかなか行けません。

 この患者さんは、医療用麻薬で意識がややぼんやりしていたところ、鼻カニューレ(両側 鼻腔(びくう) から酸素を投与する管)が外れてしまってパニックになっていました。やっと看護師が到着した時は、ナースコールを捜していたといいます。モニター上の酸素の値(SpO2)が下がっており、状態が悪くなっているなかで、防護具の着脱のためにすぐ病室へ入れず焦りを感じた、と看護師が語ってくれました。

隔離室から看護師の姿が見えるように

 このようなことがあったため、患者さんの不安が強くなりました。その夜からは、不安をできるだけ軽減するよう、隔離室の前室(患者さんのいる隔離室からガラス越しに見えるようになっている)に看護師がいて、患者さんから姿が見えるようにしたそうです。

 また従来、患者さんの訴えがあれば、その都度聞いていくのが通常のやり方でしたが、コロナ感染で隔離されている患者さんの場合は、隔離室に入室した際にできる限り話を聞くことにしたそうです。感染リスクの面から長時間はいられませんが、医師でも看護師でも、患者さんの病室に入ったときは、できるだけ話をする時間をもち、その内容をチームで共有することにしています。患者さんと接したスタッフができるだけニーズをキャッチし、チームで対応できるようにすることが一層自覚されたそうです。

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鶴若麻理(つるわか・まり)

 聖路加国際大学教授(生命倫理学・看護倫理学)、同公衆衛生大学院兼任教授。
 早稲田大人間科学部卒業、同大学院博士課程修了後、同大人間総合研究センター助手、聖路加国際大助教を経て、現職。生命倫理の分野から本人の意向を尊重した保健、医療の選択や決定を実現するための支援や仕組みについて、臨床の人々と協働しながら研究・教育に携わっている。2020年度、聖路加国際大学大学院生命倫理学・看護倫理学コース(修士・博士課程)を開講。編著書に「看護師の倫理調整力 専門看護師の実践に学ぶ」(日本看護協会出版会)、「臨床のジレンマ30事例を解決に導く 看護管理と倫理の考えかた」(学研メディカル秀潤社)、「ナラティヴでみる看護倫理」(南江堂)。映像教材「終わりのない生命の物語3:5つの物語で考える生命倫理」(丸善出版,2023)を監修。鶴若麻理・那須真弓編著「認知症ケアと日常倫理:実践事例と当事者の声に学ぶ」(日本看護協会出版会,2023年)

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