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医療費を支払いたいけど、認知症の親の預金は引き出せる?…代理権ない家族も特例で

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 親の判断能力が認知症などで低下すると、蓄えていた預貯金を子どもが代わりに引き出せず、親の医療費の支払いなどに困ることがある。全国銀行協会は今年、認知症の人の預金引き出しについての見解をまとめた。どんな内容で、家族はどう備えるべきなのか。専門家に聞いた。(村上藍)

[アドバイザー]元木翼さん

全銀協が見解

認知症の人の預金引き出し…代理権ない家族も特例で

元木翼さん

 預金の引き出しは、原則として本人の意思確認が必要だ。裁判所などが認めた代理権がなければ、家族でも代わりに引き出すことはできない。認知症になって口座が凍結されると、年金などの振り込みはされても、引き出すことができなくなる。

 銀行としてはこうした場合、認知能力が低下した人のお金の管理や様々な契約を代行する「成年後見制度」の利用を促している。しかし、手続きの手間や費用などが難点となり、利用が伸び悩んでいるのが実情だ。銀行の窓口でトラブルになるケースも増えていることから、全銀協が見解を示すことになった。

 見解では、認知能力が低下した顧客との取引についての考え方を示した。

 後見制度の利用を原則としつつ、「極めて限定的な対応」として、代理権がない家族による引き出しに応じるとした。

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 具体的には、「診断書の提出、担当医や本人との面談などで、認知能力を確認できる」「医療費など、本人の利益に適合することが明らかな支払いに充てる」といった場合を挙げた。

 全銀協の見解について、司法書士法人ミラシアの元木翼代表は「金融機関が具体的に対応するのはこれから。必要になる提出書類や引き出せる金額の上限などには(金融機関によって)差が生じるだろう」と指摘。その上で、「事前準備がなくても、必要最低限の費用は口座から引き出せるようになる可能性がある」と話す。

 ただ、生活費をまとめて引き出すことや、施設に入らずに自宅をリフォームする費用など、金融機関が応じない可能性はあるという。使用目的の証明や、本人の利益かどうかを判断することが難しいためだ。

 その場合、すでに認知症で判断能力が失われていれば、家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」を使うしかない。

事前に準備を

  やはり、元気なうちに備えることが家族の安心にもつながる。選択肢としては、主に任意後見と家族信託がある。

任意後見は、元気なうちに、子どもなど信頼できる相手を後見人として選び、認知能力が低下した時から、様々な手続きを任せる制度だ。

 万が一の不正をチェックするため、弁護士らが監督人になる。預金の引き出し時などに証明はいらなくなるものの、後見人から監督人に定期的な報告が必要となる。監督人には月1万~2万円ほどの報酬を支払い続けなければならない。

 家族信託は、認知能力が低下する前の元気なうちから、財産などの管理を家族らに委ねる点が、後見制度とは異なる。導入時には、司法書士などの専門家に依頼する費用として、対象とする財産の1%程度がかかる。運用に専門家は関わらず、財産管理は信頼できる相手や家族だけで行うのが原則だ。

 元木さんは「家族に迷惑をかけず、思い描いた通りの生活を送るためには、家族で話し合うなどできる準備は事前にしておいた方がよい」と話している。

  もとき・つばさ  司法書士、行政書士。1983年、東京都生まれ。大手司法書士法人の支店長などを経て、2017年に独立した。現在は司法書士法人ミラシアと行政書士事務所ミラシアの代表を務め、家族信託や認知症対策などを中心に、相談業務や講演活動などにあたっている。

金融機関 対応に苦慮

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 厚生労働省によると、2025年には推計で認知症の高齢者が約700万人に上り、65歳以上の5人に1人が認知症になるとされる。さらに第一生命経済研究所では、30年には認知症の人が金融資産を約215兆円保有することになるとの試算を公表している。

 金融資産を保有する認知症の人の増加によって、金融機関が対応に苦慮する場面も増えている。19年の全銀協の調査では、約6割の金融機関が、認知症の人の窓口対応で困ったことが3年前に比べて増加したと回答している。状況に応じて裁量で本人に代わる人の引き出しに対応している金融機関も6割あった。

 事前に指定した代理人が、預金を引き出せる制度のある金融機関もある。多くは手続きをした元気な時点から、代理人も引き出せるようになる。ただ、認知能力が低下すると、この制度が使えなくなる金融機関もあるので確認が必要だ。

 三菱UFJフィナンシャル・グループは3月、予約型代理人サービスを開始した。予約型の場合、事前に指定された親族らは、口座の所有者の認知能力が低下した際に診断書を提出すると、預金の引き出しや金融商品の売却などをできるようになる。

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