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医療・健康・介護のコラム

公的年金の「賦課方式」ってどういうこと?…保険料は積み立てではなく「高齢世代への仕送り」

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公的年金の「賦課方式」とは?…高齢世代への仕送り

 年を取って自分でお金を稼ぐことが難しくなった後、生活を支える収入の柱となるのが公的年金だ。高齢者の生活を社会全体で安定させる仕組みとして、国が運営している。働く現役世代が収入の一部を保険料として国に納め、国は主に保険料を財源に、原則65歳以上の高齢者らに年金を支払う。

 ポイントは、自分が納めた保険料が将来そのまま返ってくるわけではないことだ。納めた保険料は、その時々の高齢者らの年金の支払いに充てられている。現役世代が年を取れば、今度はその下の世代が払う保険料から年金を受け取る。

 こうした仕組みは「 賦課ふか 方式」と呼ばれている。特定社会保険労務士の桶谷浩さんは「現役世代から高齢世代への仕送り」と説明する。若い世代が上の世代を順送りで支えていくため、「世代間の支え合い」とも言われる。

 賦課方式のほか、自分の老後のために保険料を積み立てる「積み立て方式」を採用する国もある。自分が納めた分を老後に受け取るので「シンプルでわかりやすい」との意見もある。

 ただ、納めた保険料を老後に取り崩していく積み立て方式は、物価が急上昇すると、同じ支給額で買えるものが減り、年金の価値が実質的に目減りするリスクがある。

 一般に物価が上がると、時間差はあっても現役世代の給与水準も上がることが多いとされる。物価が上昇したのに賃金が上がらないと生活が成り立たず、働く人がいなくなる事態を招きかねないためだ。

 賦課方式であれば、その時々の現役世代が収入の一部を保険料として納めるため、物価の変化に対応しやすい。桶谷さんは「数十年先に備える仕組みとして、物価水準に対応する賦課方式は合理的」と話す。

 ただ、賦課方式には少子高齢化の影響を受けやすいという弱点がある。支える現役世代が減り、支えられる高齢者が増えると、保険料を値上げするか、支給額を抑制しなければ制度を維持できなくなる。日本は急速な少子高齢化で支え手が減る一方で支えられる人が増えており、年金財政が厳しくなっている。

 国は70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とし、働く高齢者の拡大を目指している。働く高齢者に税金や保険料を納める支え手になってもらうねらいもある。(沼尻知子)

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