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武井明「思春期外来の窓から」

医療・健康・介護のコラム

高1から手首を切るようになった女子 「怒る父親」がフラッシュバックし…

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 思春期外来で自傷する子どもたちを診ていると、過去のつらい記憶がよみがえる「フラッシュバック」のために自傷に至る子どもたちが、少なくないことに気づきます。

テストで悪い点数を取ると怒る父

高1から手首を切るようになった女子 「怒る父親」がフラッシュバックし…

 彩乃さん(仮名)は、自傷のために思春期外来を受診した女子高生です。

 お父さんは、家族が自分の思うように動いてくれないと、すぐにどなる人です。小・中学校時代の彩乃さんは、勉強をしなかったり、テストで悪い点数を取ったりすると、お父さんにひどく怒られていました。そのため、お父さんが帰宅すると、彩乃さんはすぐに自室にこもるようになってしまいました。

 高校入学後から、彩乃さんは自宅を離れて、母方のおばあちゃんの家から通学するようになりました。高校1年の9月から、自分の手首をかみそりで傷つけるようになり、保健室の先生に相談しています。その先生の勧めで、お母さんと一緒に思春期外来を受診しました。

 初診時の彩乃さんは、

 「つらいことばかりで消えてしまいたい」

 と泣きながら訴える一方で、

 「病院に来ても、何も変わらない。私には通院はムダです!」

 とも言いました。

 お母さんは、彩乃さんをひどく心配していました。お母さんと一緒に、2週間に1度の割合で通院してもらうことにしました。

お父さんに叱られた場面を思い出すと…

 彩乃さんは、お母さんとの通院を嫌がらずに続けてくれました。通院を始めて2か月がたった時に、彩乃さんはようやくこころの内を語ってくれるようになりました。

 「高校生になってから、昔、お父さんから叱られた場面を頻繁に思い出してつらくなりました。そんな時に手首を切るようになったんです」

 と話してくれました。

 「自傷すると、お父さんに怒られ、苦しかった気持ちが楽になるんです。でも、それは一瞬なので、また繰り返して切っちゃうんです」

 とも述べていました。

 診察に同席していたお母さんは、お父さんから彩乃さんを守ってあげられなかったということで、自分をひどく責めていました。

 「今の彩乃には、とにかく安心できる環境が必要ですね」

 とお母さんは述べ、これからは自分がお父さんから守ると話してくれました。

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武井 明(たけい・あきら)

 1960年、北海道倶知安町生まれ。旭川医科大学大学院修了。精神科医。市立旭川病院精神神経科診療部長。思春期外来を長年にわたって担当。2009年、日本箱庭療法学会河合隼雄賞受賞。著書に「子どもたちのビミョーな本音」「ビミョーな子どもたち 精神科思春期外来」(いずれも日本評論社)など。

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1件 のコメント

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リストカットに投影される生活と心の揺らぎ

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

本文を読んでいて意外に思ったのが、自傷行為を悪ととらえている記載がないことでした。自傷行為をしていた知り合いを見たことがありますが、結局、痛みの...

本文を読んでいて意外に思ったのが、自傷行為を悪ととらえている記載がないことでした。自傷行為をしていた知り合いを見たことがありますが、結局、痛みの中に承認欲求とか何とかの心理的な安定を得ているように見えました。暴言とか、そのつもりがなくてもプレッシャーをかけられて、心だけが傷つくのがしんどくて、肉体も傷つける自傷行為に及ぶのだと個人的には思います。心だけが傷つくのはすごくつらいことです。リストカットのような物理的な自傷行為だけでなく、精神症状や異常行動などに現れることもあります。なので、末端に現れる現象だけではなく、本文の様に根っこの要因や感情の揺らぎをたどって段階的に修正をかけさせていく必要があります。あくまで主体は患者やその周囲の要因であって、医者や医療者も基本的には第三者に過ぎない意識は大事なのではないかと思います。こういう書き方をしているのは、結局、大人に守られるケースばかりではないことを知っているからです。漫画の受け売りですが、色んな制約はありますが、最終的にはどこまで行っても自分の心は自分だけのものです。大人になるということは様々な要素との付き合いであって、顔だけでなく、心や行動も仮面や化粧を覚えていかないといけません。一方で、つらくても芯の部分も自分で立て直していかないといけません。運が悪くても、つらくても、マイペースで心の構造を立て直していくしかありません。

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